生理特性のバリエーションの構造(<特集>生体機能のバリエーション(70回大会シンポジウムの紹介))

「1. 個人差は誤差であるか」 我々ひとりひとりは互い異なった特性を持つ存在であり, このばらつきはヒトの集団が持つ本質的特性である. このばらつき, つまり個人差について考察することは生理人類学の重要なテーマの一つであると思われる. 一般にヒトの生理機能の測定は大きな個人差を示し, 曖昧な結果を生む場合も多い. ヒトの生理機能の測定・解析において, この個人差をどう扱い, どう解釈するか? ということは極めて重要な問題である. 昨今, 研究において結果を提示する際には「統計的に有意」であることが求められる. 実験結果において個人差が大きければ有意な差を得ることができない. 個人差が小さければ...

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Published in日本生理人類学会誌 Vol. 19; no. 4; pp. 277 - 282
Main Author 小林, 宏光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生理人類学会 25.11.2014
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Summary:「1. 個人差は誤差であるか」 我々ひとりひとりは互い異なった特性を持つ存在であり, このばらつきはヒトの集団が持つ本質的特性である. このばらつき, つまり個人差について考察することは生理人類学の重要なテーマの一つであると思われる. 一般にヒトの生理機能の測定は大きな個人差を示し, 曖昧な結果を生む場合も多い. ヒトの生理機能の測定・解析において, この個人差をどう扱い, どう解釈するか? ということは極めて重要な問題である. 昨今, 研究において結果を提示する際には「統計的に有意」であることが求められる. 実験結果において個人差が大きければ有意な差を得ることができない. 個人差が小さければ, 小さな変化でも統計的有意となる. このことから我々は個人差を悪者のように考えてしまいがちである. しかし, 個人差があるということは, ヒトが種として生存していくために不可欠な特性であるはずである. 個人差のない均質な集団は環境の変化に適応することができない.
ISSN:1342-3215
2432-0986
DOI:10.20718/jjpa.19.4_277