足圧中心動揺と筋力の関係から見た高齢者の側方ステップ反応特性
「1. 緒言」高齢者の転倒はときに重大な障害に結びつき, 転倒に対する恐怖心は高齢者の日常生活行動や生活空間を縮小させ, 日常生活活動の低下を招いている1). 人間生活の質の向上に直接関与する生理人類学においても, 近年の社会的な問題である高齢者の転倒発生要因の解明や予防は重要な課題である. 高齢者の転倒発生には老化現象や疾病・障害などの内的要因に加え, 住居環境などの外的要因が複雑に関連しあっている2). 内的要因の代表的なものとして, 加齢に伴う姿勢反射およびバランス能力の低下が挙げられる. バランス能力は身体質量中心すなわち重心を安定性限界とよばれる基底面の範囲内に保持する能力と定義され...
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Published in | 日本生理人類学会誌 Vol. 11; no. 4; pp. 139 - 144 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本生理人類学会
2006
Japan Society of Physiological Anthropology |
Subjects | |
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ISSN | 1342-3215 2432-0986 |
DOI | 10.20718/jjpa.11.4_139 |
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Summary: | 「1. 緒言」高齢者の転倒はときに重大な障害に結びつき, 転倒に対する恐怖心は高齢者の日常生活行動や生活空間を縮小させ, 日常生活活動の低下を招いている1). 人間生活の質の向上に直接関与する生理人類学においても, 近年の社会的な問題である高齢者の転倒発生要因の解明や予防は重要な課題である. 高齢者の転倒発生には老化現象や疾病・障害などの内的要因に加え, 住居環境などの外的要因が複雑に関連しあっている2). 内的要因の代表的なものとして, 加齢に伴う姿勢反射およびバランス能力の低下が挙げられる. バランス能力は身体質量中心すなわち重心を安定性限界とよばれる基底面の範囲内に保持する能力と定義される3). 立位姿勢においてバランスが崩れた際に用いる姿勢制御方略として, Horak et al.4)は足関節方略, 股関節方略, 踏み出し方略をあげている. この中で, 高齢者の転倒予防に最も重要な姿勢方略は, 重心が支持基底面から外れた際に一歩足を踏み出し, 新たな支持基底面上に重心を位置させる踏み出し方略と考える. 踏み出し方略は姿勢保持反応の分類ではステップ反応(steppingreaction)であり, 中枢神経系では延髄レベルでの統合に加え大脳皮質運動野による制御が関与している5). |
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ISSN: | 1342-3215 2432-0986 |
DOI: | 10.20718/jjpa.11.4_139 |