パニック障害の認知行動療法 : 残存症状にマインドフルネストレーニングを適用した症例(コロキウム報告)
「症例の概要」クライエントは, 40歳の女性(主婦)で, 夫, 長女と長男の4人暮らしであった. 来院の2年前, 近所の犬にかまれ, 狂犬病になるのではないかと考えていたら急にドキドキしてきて救急車を呼んだ. 1年前, スーパーで列に並んでいる時にパニック発作を起こし, 買い物をせず帰ってきてしまった. 近所の心療内科を受診し, 検査を受けたが身体的所見はみられず, 不安神経症(パニック障害)という診断のもと, アルプラゾラム(0.8mg/分2), 塩酸マプロチリン(30mg/分3)を処方された(第2セッション時に塩酸パロキセチン(20mg/分2)追加). 1か月前, 食事をしようとした時,...
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Published in | 行動療法研究 Vol. 33; no. 2; p. 196 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
30.09.2007
日本行動療法学会 |
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Summary: | 「症例の概要」クライエントは, 40歳の女性(主婦)で, 夫, 長女と長男の4人暮らしであった. 来院の2年前, 近所の犬にかまれ, 狂犬病になるのではないかと考えていたら急にドキドキしてきて救急車を呼んだ. 1年前, スーパーで列に並んでいる時にパニック発作を起こし, 買い物をせず帰ってきてしまった. 近所の心療内科を受診し, 検査を受けたが身体的所見はみられず, 不安神経症(パニック障害)という診断のもと, アルプラゾラム(0.8mg/分2), 塩酸マプロチリン(30mg/分3)を処方された(第2セッション時に塩酸パロキセチン(20mg/分2)追加). 1か月前, 食事をしようとした時, 血の気の引く感じがしてあわてて夫に連絡, このままではまずいと考え当院を受診した. 「アセスメント」DSM-IV-TR(American Psychiatric Association, 2000)に基づく聞き取りや質問紙によるアセスメントの結果, 広場恐怖を伴うパニック障害と考えられた. そこで, パニック障害に伴う不安の軽減と, 回避/安全確保行動の減少, および活動性の向上を目標とした介入を行うこととした. 「介入の概要」第2セッションではClark(1986)に基づく事例定式化と心理教育を行った. 過呼吸誘発テストを行った結果, パニック発作がコントロール不可能なものではないことを理解したようであった. 第3セッションから第10セッションはエクスポージャー中心の介入を行い, 電車に乗る, 歯医者など, エクスポージャーに前向きに取り組んだ. 第11セッション時のアセスメントの結果, 質問紙上での不安や抑うつは軽減したため, 終結を切り出した. しかし, 活動に対する億劫感や予期不安が残るとのことで, 目標をパニック発作の改善から, 日常生活における「億劫感」の低減に変更し, 介入を継続することとした. 億劫感の背景には自分の健康に対する自信のなさがあると考えられたため, 第13セッションから第31セッションは, この背景にある認知の歪みに焦点を当て, 認知の再構成を目指す介入を重ねた. しかし, 顕著な変化がみられず, 治療関係だけが依存的なものに変化しつつあった. そこで, 第31セッション時より, 治療関係を再整理し, 症状を意図的に制御するのではなく, 「受け入れる」対処を身につける方法として, マインドフルネストレーニングを導入した. マインドフルネスとは, 「今ここ」での経験に評価や判断を加えることなく注意を向けること(Kabat-Zinn, 1990)であり, 本ケースでは, 座禅を用いてトレーニングを行った. 当初は「すぐ眠くなる」と不満を漏らしていたが, 徐々に「出かける前に「いやだな」と考えると気持ち悪くなる」「元気な自分を他人に見せると損をするような気がしている. 本当は自分はもう元気」といった内省的な発言が聞かれるようになった. 第41セッション時のアセスメントの結果, 不安や抑うつに大きな変化はないものの, 調整型セルフコントロール, ポジティブ気分の向上がみられた. また, 自ら「いつまでも先生の世話になっていられないからね」といった言葉が語られ, 第42セッションで終結となった. |
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ISSN: | 0910-6529 2424-2594 |
DOI: | 10.24468/jjbt.33.2_196 |