中高年女性登山者のヒマラヤトレッキングにおける生理的・心理的反応について

「1. 緒言」近年, 中高年齢者が中等度高度および高高度トレッキングに参加する機会が増加している. 中高年齢者のトレッキングは, ライフスタイルを見直し自由時間を有意義に活用するための手段として取り組む場合や, 生活習慣病に関連する疾病予防のための運動習慣が高じて挑戦する場合など, その目的は様々であるが, 最も重要なのが安全の確保である. そのため旅行プランの作成だけでなく, 事前に健康状態を把握し体調を整え, さらに体力づくりトレーニングを実施しておくなど, 万全の準備をすることが重要である. それでもトレッキング中に急性高山病(acute mountain sickness:AMS)やそ...

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Published in日本生理人類学会誌 Vol. 13; no. 3; pp. 173 - 178
Main Authors 小田, 南州生, 小林, 朋子, 山下, 陽一郎, 山下, 敦美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生理人類学会 2008
Japan Society of Physiological Anthropology
Subjects
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ISSN1342-3215
2432-0986
DOI10.20718/jjpa.13.3_173

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Summary:「1. 緒言」近年, 中高年齢者が中等度高度および高高度トレッキングに参加する機会が増加している. 中高年齢者のトレッキングは, ライフスタイルを見直し自由時間を有意義に活用するための手段として取り組む場合や, 生活習慣病に関連する疾病予防のための運動習慣が高じて挑戦する場合など, その目的は様々であるが, 最も重要なのが安全の確保である. そのため旅行プランの作成だけでなく, 事前に健康状態を把握し体調を整え, さらに体力づくりトレーニングを実施しておくなど, 万全の準備をすることが重要である. それでもトレッキング中に急性高山病(acute mountain sickness:AMS)やその他の疾病を発病するケースもある1),2),3). 特に中高年においては, 加齢によるストレス耐性が低下しているため睡眠障害等のトラブルが発生することも報じられている4). 低酸素環境である中・高高度でのトレッキング中の体調異常に関しては, 救助組織や救援施設に対応してもらえる環境が整備してあればまだしも, そのような環境整備の不備によって生命に関わることになる場合も想定される. また, 高度が高くなるほどAMSの発生率が増加するという報告5)や, AMSの発生率に関しては西洋人登山者と現地ポーターやスタッフで有意差がないという報告6)もある. このことは, 高高度トレッキングにおいては高地生活者と言えども健康管理の出来・不出来で低酸素環境への順化に影響が出ることを示唆している. これらのことから中高年齢者の中・高高度トレッキング実施に際しては, 行動中の安全管理を十分に行うために健康状態の判断材料となる指標が必要であると思われる.
ISSN:1342-3215
2432-0986
DOI:10.20718/jjpa.13.3_173