高齢者を対象とした歯科疫学調査におけるサンプルの偏りに関する研究 : 質問紙の回答状況および健診受診の有無別にみた口腔および全身健康状態の比較

本調査の目的は,高齢者に対する歯科疫学調査において,現在歯数や全身健康状態などによるサンプリングバイアスがどの程度生じるかを検討することである。新潟市に在住する70歳と80歳の高齢者全員(6,629名)に対して郵送による質問紙調査を実施し,現在歯数,健康状態,歯科健診の受診希望状況などを調査した。督促回数は1回で,回収率は79.5%であった。質問紙の非回答者から無作為に選んだ対象者に,電話による聞き取り調査を行った。健診受診者は,希望者を中心に参加を募り, 763名が受診した。分析は,現在歯数と健康状態などについて,質問紙回答の有無別・回収時期別および健診受診有無別に比較した。さらに現在歯数の...

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Published inJOURNAL OF DENTAL HEALTH Vol. 50; no. 3; pp. 322 - 333
Main Authors 小川, 祐司, 山賀, 孝之, 神森, 秀樹, 高野, 尚子, 花田, 信弘, 廣富, 敏伸, 岸, 洋志, 王, 晶, 葭原, 明弘, 清田, 義和, 安藤, 雄一, 宮崎, 秀夫, 金子, 昇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 2000
日本口腔衛生学会
Japanese Society for Oral Health
Subjects
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ISSN0023-2831
2189-7379
DOI10.5834/jdh.50.3_322

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Summary:本調査の目的は,高齢者に対する歯科疫学調査において,現在歯数や全身健康状態などによるサンプリングバイアスがどの程度生じるかを検討することである。新潟市に在住する70歳と80歳の高齢者全員(6,629名)に対して郵送による質問紙調査を実施し,現在歯数,健康状態,歯科健診の受診希望状況などを調査した。督促回数は1回で,回収率は79.5%であった。質問紙の非回答者から無作為に選んだ対象者に,電話による聞き取り調査を行った。健診受診者は,希望者を中心に参加を募り, 763名が受診した。分析は,現在歯数と健康状態などについて,質問紙回答の有無別・回収時期別および健診受診有無別に比較した。さらに現在歯数の自己評価値と口腔診査値の関連を分析し,質問紙調査と質問紙の非回答者の分析結果から,母集団における現在歯数の推定値を算出した。分析の結果,口腔診査結果から算出された健診受診者の現在歯数の平均値は,母集団の推定値に比べ,70歳では2.6〜3.9本,80歳では0.8〜1.8本多いことが確認された。健康度については,質問紙の回収時期による差が認められたが,全般的に現在歯数の差の程度と比べると小さかった。以上より,高齢者を対象とした歯科健診を希望制により実施する場合には,全身的な健康状態よりも現在歯数によるバイアスが生じる可能性が大きいことが示された。
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.50.3_322