歯科治療に関わる適応障害 : 行動論の立場から(第8回日本行動療法学会大会における一般演題抄録,<特集>痛みの行動療法(I))
日常の臨床活動の中で, 歯科治療との関連において, 種々の不適応状態に陥っている人を見ることがある. それは, 歯科治療を契機にその恐怖をもったり, いろいろな身体症状を訴え出すとか, 身体的病気の治療の後に, 歯科治療に恐怖を抱くなどである. 今回は, この種の例をあげ, その症状形成とそれの治療について行動論の立場から考察したい. 症例1は, 小学1年男児(IQ=69)で, 約1年前骨折手術を受けて以来, 注射恐怖をもち, それと関連する歯科治療にも恐怖をもつにいたった. 症例2は, 中学2年男児(IQ=79)で, 彼も以前に心臓手術を受け, しかも歯科で抑えつけられて抜歯されたために,...
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Published in | 行動療法研究 Vol. 8; no. 2; pp. 116 - 117 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
30.04.1983
日本行動療法学会 |
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Summary: | 日常の臨床活動の中で, 歯科治療との関連において, 種々の不適応状態に陥っている人を見ることがある. それは, 歯科治療を契機にその恐怖をもったり, いろいろな身体症状を訴え出すとか, 身体的病気の治療の後に, 歯科治療に恐怖を抱くなどである. 今回は, この種の例をあげ, その症状形成とそれの治療について行動論の立場から考察したい. 症例1は, 小学1年男児(IQ=69)で, 約1年前骨折手術を受けて以来, 注射恐怖をもち, それと関連する歯科治療にも恐怖をもつにいたった. 症例2は, 中学2年男児(IQ=79)で, 彼も以前に心臓手術を受け, しかも歯科で抑えつけられて抜歯されたために, 歯科治療恐怖症に発展していった. 症例3, 4はいずれも主婦であり, 歯科治療で麻酔注射を受けた時に, 悪感, 胸内苦悶の後, 半ば失神状態になって, 強い不安を体験した後に歯科治療恐怖になった. 症例5も, 主婦で, 過呼吸症状を呈して以来, 心臓発作, 血液, さらには注射恐怖, 歯科治療恐怖をもつにいたった. 歯科治療は, 本人の過去における嫌悪的治療体験, 家族からの痛み体験の情報, そして歯に痛みや腫れがあって, はじめて治療を受けるという背景があり, そこでの本人には, 高い不安・緊張感があり, 受身的であり, そのような状態の中で, 口腔内への異物挿入, 麻酔注射, 痛み, ドリルの音など嫌悪的事柄が伴うので, そこに恐怖が条件づけられやすくなるものと思われる. その結果, 自己効力感が低下し, 予期恐怖がたかまり, 遂には歯科治療に対する回避行動が起こるのである. しかも, その恐怖は, 歯科治療と類似の事柄にも般化する傾向がある. また, 逆の現象も起こる. その治療法としては, 行動療法の適用がよく, 子どもには, 継時的接近法(歯科医と親への説明), 大人には脱感作法を実施した. その脱感作法の内容は, 歯科治療に関連のある注射, 血液, 不安発作に分けて, それぞれ行ない, 成果をあげることができた. |
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ISSN: | 0910-6529 2424-2594 |
DOI: | 10.24468/jjbt.8.2_116_2 |