特別支援教育における立体識別感覚を重視した食育教具の開発と観察法による評価

【目的】特別な支援が必要な児童生徒への食育では,学習者の保有する感覚を活用した教具の選択が重要とされるが,その有効性を検証した研究は少ない。我々は特別支援教育において立体識別感覚を重視した教具が広く活用されている現状に着目し,「障害の種類や程度が様々で特別な支援を必要とする児童生徒への食育において,立体教具は平面教具と比べて児童生徒のより高い関心と反応を引き出す」との仮説を立てた。この仮説の検証を目的として以下の研究を行った。 【方法】学習者は肢体不自由を主とした障害を有するS養護学校小学~高等部の45名(参加率54.2%)であり,2013年9月に疑似収穫体験を主活動とする食育を行った。教具は...

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Published in栄養学雑誌 Vol. 73; no. 6; pp. 230 - 242
Main Authors 高木, 絢加, 加古, 千菜都, 駒居, 南保, 本窪田, 直子, 鈴木, 麻希, 林, 育代, 住田, 実, 永井, 成美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会 01.12.2015
日本栄養改善学会
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Summary:【目的】特別な支援が必要な児童生徒への食育では,学習者の保有する感覚を活用した教具の選択が重要とされるが,その有効性を検証した研究は少ない。我々は特別支援教育において立体識別感覚を重視した教具が広く活用されている現状に着目し,「障害の種類や程度が様々で特別な支援を必要とする児童生徒への食育において,立体教具は平面教具と比べて児童生徒のより高い関心と反応を引き出す」との仮説を立てた。この仮説の検証を目的として以下の研究を行った。 【方法】学習者は肢体不自由を主とした障害を有するS養護学校小学~高等部の45名(参加率54.2%)であり,2013年9月に疑似収穫体験を主活動とする食育を行った。教具は,給食や栽培体験でなじみがある野菜8種類とした。B1 サイズのパネル(縦)の右半分に紙,左半分に布を張り畑の様子を再現し,右半分にはほぼ実物大の作物を模した平面教具(紙製),左半分には立体教具(布製)を同数マジックテープ等で張り付けた。児童生徒はクラス単位(4~6名)でランチルームに来室し,約15分間壁面に張り付けた畑から作物を自由に収穫した。児童生徒の反応(視線・発声等)と収穫数を観察者が記録しスコア化した。担任からは自由記述による評価を得た。 【結果】立体教具は,平面教具よりも反応スコア,収穫数ともに有意に高値を示した。担任評価からも立体教具の優位性が示された。 【結論】本研究で対象とした特別支援学校における児童生徒への食育において,立体識別感覚を重視した立体教具によって児童生徒のより高い関心や反応を引き出すことが,平面教具との比較において示唆された。
ISSN:0021-5147
1883-7921
DOI:10.5264/eiyogakuzashi.73.230