喘息患者の重症度と対処行動との関連

喘息は「気道内炎症を主体とする慢性の気道疾患」と定義される器質的疾患である. また喘息は, 情動に関する自律神経系と中枢神経系から影響を受ける, 多因子性疾患としても知られている. 永田1)は, 喘息発作前や症状増悪前に慢性的あるいは強い心理社会的ストレスに直面していた患者が80~90%におよび, またストレス状況からの解放(心理社会的環境調整, 本人の適応力の向上等)によって, 症状が軽快することも少なくないと報告している. また喘息患者は, 「喘息である」ことによって様々なストレスを経験している. たとえば, 不定期にかつ非予測的に繰り返される喘息発作による身体的侵襲, およびそれにともな...

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Published in日本生理人類学会誌 Vol. 3; no. 4; pp. 149 - 154
Main Authors 山中, 順子, 玉木, 敦子, 宮本, 佐知, 久米, 田鶴子, 大西, 久男, 服部, 祥子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生理人類学会 1998
Japan Society of Physiological Anthropology
Subjects
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Summary:喘息は「気道内炎症を主体とする慢性の気道疾患」と定義される器質的疾患である. また喘息は, 情動に関する自律神経系と中枢神経系から影響を受ける, 多因子性疾患としても知られている. 永田1)は, 喘息発作前や症状増悪前に慢性的あるいは強い心理社会的ストレスに直面していた患者が80~90%におよび, またストレス状況からの解放(心理社会的環境調整, 本人の適応力の向上等)によって, 症状が軽快することも少なくないと報告している. また喘息患者は, 「喘息である」ことによって様々なストレスを経験している. たとえば, 不定期にかつ非予測的に繰り返される喘息発作による身体的侵襲, およびそれにともなう精神的苦痛や恐怖感はもちろん, 喘息発作によって学校や会社を頻回に遅刻または欠席しなくてはならない状況に陥る. そこから, 社会的・経済的問題が生じるなど, 多くの患者は広範かつ深刻なストレスを経験している. そして, そのようなストレスがさらに喘息発作を誘発する. このように, 喘息の症状とストレスとは強く関連していると考えられている2,3). したがって喘息の症状コントロールには, 身体的治療だけでなく, ストレス状況改善のための患者個々の対処行動も重要な意味をもつと考えられる. すなわち, 喘息であることに関連するストレスに対して適切な対処行動をとることができる患者は, そうでない患者よりも病状をうまくコントロールできると考えられる.
ISSN:1342-3215
2432-0986
DOI:10.20718/jjpa.3.4_149