3歳児における歯への色素沈着とう蝕ならびに口唇閉鎖との関連

幼児の歯科健診において,歯への外来性色素沈着を歯の汚れ,内因性の歯質の着色またはう歯ではないかと気にしてくる保護者を見受ける.この色素沈着が起こるには単にお茶を飲む習慣のみでなく,日常的な口唇の閉鎖状況の違いも影響しているように思われる.今回,この色素沈着の有無とう蝕や口唇閉鎖などの口腔状況について検討した.  調査対象は,浜松市における3歳児歯科健診の受診者328名であり,通常の歯科健診の診査記載項目に加えて歯への色素沈着の有無と口唇閉鎖不全の有無を診査した.同時に,幼児のお茶等の飲物の摂取に関する質問紙調査を実施した.  その結果,色素沈着歯数が多いほどう蝕有病者率は低くなる傾向がみられた...

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Published in口腔衛生学会雑誌 Vol. 63; no. 3; pp. 265 - 271
Main Authors 石川, 昭, 坂本, 友紀, 久保田, 友嘉, 荒川, 浩久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 30.04.2013
日本口腔衛生学会
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Summary:幼児の歯科健診において,歯への外来性色素沈着を歯の汚れ,内因性の歯質の着色またはう歯ではないかと気にしてくる保護者を見受ける.この色素沈着が起こるには単にお茶を飲む習慣のみでなく,日常的な口唇の閉鎖状況の違いも影響しているように思われる.今回,この色素沈着の有無とう蝕や口唇閉鎖などの口腔状況について検討した.  調査対象は,浜松市における3歳児歯科健診の受診者328名であり,通常の歯科健診の診査記載項目に加えて歯への色素沈着の有無と口唇閉鎖不全の有無を診査した.同時に,幼児のお茶等の飲物の摂取に関する質問紙調査を実施した.  その結果,色素沈着歯数が多いほどう蝕有病者率は低くなる傾向がみられた.また,口唇閉鎖不全がある者は色素沈着がみられる割合が高く,開咬を認める割合も高かった.  よく飲むお茶は麦茶が一番多く,次が煎茶であった.よく飲むお茶に煎茶を選択した者は,色素沈着を有する割合が有意に高かった.逆に,よく飲むお茶に麦茶を選択した者は,色素沈着する割合が有意に低かった.お茶以外で子どもがよく飲む飲み物は,牛乳が一番で,次が果実系飲料であった.炭酸系飲料やスポーツ飲料をよく飲むと選択した者は,う蝕有病者率が有意に高かった.  これらの結果から,色素沈着を有する幼児においてはう蝕リスクは低いといえるが,咀嚼や呼吸といった口腔機能の発達という面では注意を要することが示唆された.
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.63.3_265