ポインティング反応訓練とラベリング反応の関係 : 自閉的MR青年の事例(第8回日本行動療法学会大会における一般演題抄録,<特集>痛みの行動療法(I))

自閉的MR青年にポインティング訓練を実施し, その成立経過がラベリング反応にどのように影響するかを, 多層ベースライン計画法によって検討した. ケースは20歳男子で, 幼児期より自閉症と診断され, 鈴木ビネーでIQ22, 大脇式MR児用検査でIQ25であった. 食物を主とした身の廻りの物の名称は多く知っているが, 自発語はほとんどない. エコラリアが顕著. 要求は命令形で言う. アイコンタクト良好. 固執傾向あり. 自己刺激的行動はあるが, 自傷行為はない. 幼少期は多動. 現在まで, 人物のラベリング, 動作の叙述, 「主語+動詞」による叙述などの訓練を受けた. 手続きと結果:材料は赤, 黄...

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Published in行動療法研究 Vol. 8; no. 2; pp. 119 - 120
Main Author 佐々木, 和義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本認知・行動療法学会 30.04.1983
日本行動療法学会
Japanese Association for Behavioral and Cognitive Therapies( JABCT )
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ISSN0910-6529
2424-2594
DOI10.24468/jjbt.8.2_119_2

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Summary:自閉的MR青年にポインティング訓練を実施し, その成立経過がラベリング反応にどのように影響するかを, 多層ベースライン計画法によって検討した. ケースは20歳男子で, 幼児期より自閉症と診断され, 鈴木ビネーでIQ22, 大脇式MR児用検査でIQ25であった. 食物を主とした身の廻りの物の名称は多く知っているが, 自発語はほとんどない. エコラリアが顕著. 要求は命令形で言う. アイコンタクト良好. 固執傾向あり. 自己刺激的行動はあるが, 自傷行為はない. 幼少期は多動. 現在まで, 人物のラベリング, 動作の叙述, 「主語+動詞」による叙述などの訓練を受けた. 手続きと結果:材料は赤, 黄, 青, 緑の4色のペグで, 強化子は微笑, うなづき, 言語賞賛色弁別成立の確認の後, 色名に関してポインティングとラベリングとのベースラインを測定した結果, 各色ともポインティングもラベリングも未成立であった. ポインティング訓練は, 赤単独, 黄単独, 赤黄弁別, 青単独, 赤黄青弁別緑単独, 4色弁別の順で行なった. その結果, ポインティングは各色とも訓練要因導入に伴なって学習が成立し, ラベリングは赤には「アカアオキイロ」, 他の3色には「キイロ」の反応が高率に生起した. すなわち, 「キイロ」反応の刺激弁別はできておらず, ポインティングの成立のみでは正しいラベリング反応を引き出すことができなかった. 但し, 反応レパートリーは4色の色名, あるいはその組合せであった. 赤のラベリング訓練の移行後は, 青には「アカ」反応が高率で, 黄と緑には「キイロ」と「ミドリ」の反応が半ばし, 赤青対黄緑の弁別状態となった. 青と黄は訓練要因導入に伴なって正反応が増加したが, 緑では黄への要因導入とともに正反応が増加し, 黄と緑の弁別が成立した. 本事例では, ポインティング反応成立のラベリング反応に対する効果は, 反応レパートリーを規定するにとどまり, ラベリング訓練において誤反応に対してモデル語を受容した時に表出させることの必要性が示唆されたと考えられる.
ISSN:0910-6529
2424-2594
DOI:10.24468/jjbt.8.2_119_2