長野県上伊那地区における永久歯の抜歯原因調査
目的 : 現在まで, 2005年に厚生労働省が施行した歯科疾患実態調査に基づく永久歯の抜歯原因調査等の報告があるが, 抜歯原因に関する寄与因子まで検討した疫学的研究はほとんど存在しない. そこで本研究は, 長野県に位置する上伊那歯科医師会の管轄地域における永久歯の抜歯原因および考査を行うことを目的とした. 材料と方法 : 2016年6月27日から8月6日までの41日間, 長野県上伊那地区の歯科医院に来院し, 本疫学調査の同意を文書で得た患者804名を対象とした. 各患者の性別, 年齢, 抜歯部位, 抜歯にいたった主要因, 口腔内状態 (咬耗, くさび状欠損, 口蓋隆起, 下顎隆起), 口腔内の...
Saved in:
Published in | The Japanese Journal of Conservative Dentistry Vol. 61; no. 3; pp. 163 - 170 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
2018
日本歯科保存学会 The Japanese Society of Conservative Dentistry |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0387-2343 2188-0808 |
DOI | 10.11471/shikahozon.61.163 |
Cover
Summary: | 目的 : 現在まで, 2005年に厚生労働省が施行した歯科疾患実態調査に基づく永久歯の抜歯原因調査等の報告があるが, 抜歯原因に関する寄与因子まで検討した疫学的研究はほとんど存在しない. そこで本研究は, 長野県に位置する上伊那歯科医師会の管轄地域における永久歯の抜歯原因および考査を行うことを目的とした. 材料と方法 : 2016年6月27日から8月6日までの41日間, 長野県上伊那地区の歯科医院に来院し, 本疫学調査の同意を文書で得た患者804名を対象とした. 各患者の性別, 年齢, 抜歯部位, 抜歯にいたった主要因, 口腔内状態 (咬耗, くさび状欠損, 口蓋隆起, 下顎隆起), 口腔内の清掃状態, 間食の習慣, 甘い物の嗜好, 定期歯科検診の受診, および歯髄の状態について調査を行い, ロジスティック回帰分析を行った. 結果 : 管轄地域に開設している81上伊那歯科医師会会員診療所中56歯科医院が本研究に参加した. 被験者の男女比は男性54%, 女性46%であった. 年齢構成は75歳以上が23%と最多で, 次いで65~69歳が14%であった. 抜歯原因で最も多かったのが慢性歯周炎で, 26%であった. 次いで, 智歯周囲炎による抜歯が23%, 以下根尖性歯周炎21%, 歯の破折20%, う蝕による抜歯9%であった. 部位別では, 智歯を除いても大臼歯が30%を占めていた. 生活習慣や口腔内状態と抜歯要因とに関するロジスティック回帰分析により, 1. 慢性歯周炎やう蝕を原因とする抜歯では, 口腔内清掃状態が有意なオッズ比を示した. 2. う蝕および根尖性歯周炎を原因とする抜歯では, 定期歯科検診受診者が有意なオッズ比を示した. 3. 歯の破折を原因とする抜歯では, 咬耗や, くさび状欠損が有意なオッズ比を示した.という結果を得た. 結論 : 本調査では抜歯の原因として慢性歯周炎が最も高頻度であり, 次いで智歯周囲炎, 根尖性歯周炎, 歯の破折, う蝕の順であった. また本研究により, ①口腔内清掃状態はう蝕や慢性歯周炎による抜歯と関連があり, 良好な場合は抜歯のリスクが低いこと, ②定期歯科検診受診者では, う蝕および根尖性歯周炎による抜歯のリスクが低いこと, および③咬耗やくさび状欠損は歯の破折による抜歯のリスクを増加させることが示唆された. |
---|---|
ISSN: | 0387-2343 2188-0808 |
DOI: | 10.11471/shikahozon.61.163 |