外傷性胸部大動脈損傷の手術中に外傷性重症三尖弁逆流の併発を診断できた一例

鈍的胸部外傷による外傷性三尖弁逆流は初診時に見逃されることも多い。原因として,非常に稀であり認知度が低いこと,随伴する他の鈍的胸部外傷により所見を得にくいこと,特異的初期症状が乏しいこと等があげられる。また外傷後しばらくして弁損傷を生じた報告もある。加えて本病態では症状が顕在化しにくいため右心不全が進行するまで診断が遅れることも少なくない。以上を考慮し,鈍的胸部外傷の存在や心筋バイオマーカーの上昇など鈍的心損傷の鑑別が必要な症例では,初診時,更にはその後も反復して心エコー等の検査を行うべきである。治療のコンセンサスは乏しいが,重症の一次性三尖弁逆流では外科的治療が推奨となりうる。特に外傷性三尖...

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Published inCardiovascular Anesthesia Vol. 28; no. 1; pp. 169 - 173
Main Authors 村上, 遙香, 谷津, 祐市, 岩川, 明日香, 大西, 淳司, 平﨑, 盟人, 井上, 一由, 山本, 修, 安富, 苗波子, 小林, 収, 黒江, 泰利, 池田, 遼太郎, 小畑, ダニエル, 西山, 波南, 亀田, 奈々
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会 01.09.2024
日本心臓血管麻酔学会
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ISSN1342-9132
1884-7439
DOI10.11478/jscva.2024-2-009

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Summary:鈍的胸部外傷による外傷性三尖弁逆流は初診時に見逃されることも多い。原因として,非常に稀であり認知度が低いこと,随伴する他の鈍的胸部外傷により所見を得にくいこと,特異的初期症状が乏しいこと等があげられる。また外傷後しばらくして弁損傷を生じた報告もある。加えて本病態では症状が顕在化しにくいため右心不全が進行するまで診断が遅れることも少なくない。以上を考慮し,鈍的胸部外傷の存在や心筋バイオマーカーの上昇など鈍的心損傷の鑑別が必要な症例では,初診時,更にはその後も反復して心エコー等の検査を行うべきである。治療のコンセンサスは乏しいが,重症の一次性三尖弁逆流では外科的治療が推奨となりうる。特に外傷性三尖弁逆流は若年で生じうる病態であり,弁形成が可能な時期を逃さないことが重要と考えられる。我々の症例は,初診時の経胸壁心エコーで三尖弁の異常は指摘できないまま外傷性大動脈損傷に対し緊急手術となった。しかし人工心肺で心停止となる前に経食道心エコーで外傷性の重症三尖弁逆流を発見できたため,一期的に修復することができ良好に経過した。
ISSN:1342-9132
1884-7439
DOI:10.11478/jscva.2024-2-009