硫化水素によるヒト歯肉上皮幹細胞のアポトーシス誘導

揮発性硫黄化合物(Volatile Sulfur Compounds:VSC)は主な口臭原因物質である.VSCの一つである硫化水素(H2S)は,歯肉上皮・結合組織細胞に対してアポトーシスの誘導を促進させ,歯周炎発症あるいは進行に重要な役割を果たすと考えられている.また,ヒト歯肉上皮幹細胞は歯肉組織の恒常性維持や創傷治癒で重要な働きを示すが,H2Sとの関連は明らかではない.そこで本研究では,H2Sがヒト歯肉由来の上皮幹細胞でアポトーシスを誘導することを証明し,さらにアポトーシスシグナル伝達経路の活性化メカニズムを検討した.ヒト歯肉上皮幹細胞は,α6β4インテグリンと増殖関連マーカーCD71を用い...

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Published in口腔衛生学会雑誌 Vol. 60; no. 3; pp. 224 - 232
Main Author 落合, 真美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 2010
日本口腔衛生学会
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ISSN0023-2831
2189-7379
DOI10.5834/jdh.60.3_224

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Summary:揮発性硫黄化合物(Volatile Sulfur Compounds:VSC)は主な口臭原因物質である.VSCの一つである硫化水素(H2S)は,歯肉上皮・結合組織細胞に対してアポトーシスの誘導を促進させ,歯周炎発症あるいは進行に重要な役割を果たすと考えられている.また,ヒト歯肉上皮幹細胞は歯肉組織の恒常性維持や創傷治癒で重要な働きを示すが,H2Sとの関連は明らかではない.そこで本研究では,H2Sがヒト歯肉由来の上皮幹細胞でアポトーシスを誘導することを証明し,さらにアポトーシスシグナル伝達経路の活性化メカニズムを検討した.ヒト歯肉上皮幹細胞は,α6β4インテグリンと増殖関連マーカーCD71を用いて磁気分離した.分離した細胞は幹細胞マーカーのp63とサイトケラチン19,角化上皮細胞マーカーのサイトケラチン10とインボルクリンの発現を免疫染色にて観察した.ヒト歯肉上皮幹細胞は,H2S濃度50ng/mLに調整した5%CO2空気に持続的に供給し,24時間と48時間培養後にアポトーシス細胞を検出した.アポトーシス伝達経路を検討するために,ミトコンドリア膜脱分極およびシトクロムCの細胞質への逸脱に続いて活性されるCaspase-9と-3について測定した.H_2S曝露時間の経過とともに,アポトーシス細胞が有意に増加した(p<0.01).ミトコンドリア膜脱分極,シトクロムC逸脱は曝露時間の経過とともに有意に増加し(p<0.01),Caspase-9と-3の活性も有意に増加した(p<0.01).本実験結果から,H2Sはヒト歯肉上皮幹細胞でアポトーシスを誘導することが示された.
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.60.3_224