脂質異常症患者における残存歯数および重度歯周炎と頸動脈内中膜厚との関連性

目的 : 歯周病と動脈硬化との関連については以前から研究されているが, 日本人における脂質異常症患者のみを対象とした動脈硬化と, 歯周炎を含む口腔内との関連を調査した報告はほとんどない. 本研究ではこれらの関係を明らかにすることを目的として, 脂質異常症患者における頸動脈超音波検査および歯周組織検査の記録を分析した. 対象と方法 : 北海道医療大学病院内科通院中の脂質異常症患者のなかで, 同歯科も受診し, 頸動脈超音波検査・血清脂質測定・歯周組織検査を実施済の52名を対象とした. 動脈硬化進展指標である頸動脈の最大内中膜厚 (max-IMT) はSpearmanの順位相関係数による各検査項目と...

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Published inThe Japanese Journal of Conservative Dentistry Vol. 61; no. 2; pp. 132 - 144
Main Authors 小西, ゆみ子, 長澤, 敏行, 川上, 智史, 尾立, 達治, 森, 真理, 古市, 保志, 寺田, 裕, 森谷, 満, 舞田, 健夫, 井出, 肇, 辻, 昌宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2018
日本歯科保存学会
The Japanese Society of Conservative Dentistry
Subjects
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.61.132

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Summary:目的 : 歯周病と動脈硬化との関連については以前から研究されているが, 日本人における脂質異常症患者のみを対象とした動脈硬化と, 歯周炎を含む口腔内との関連を調査した報告はほとんどない. 本研究ではこれらの関係を明らかにすることを目的として, 脂質異常症患者における頸動脈超音波検査および歯周組織検査の記録を分析した. 対象と方法 : 北海道医療大学病院内科通院中の脂質異常症患者のなかで, 同歯科も受診し, 頸動脈超音波検査・血清脂質測定・歯周組織検査を実施済の52名を対象とした. 動脈硬化進展指標である頸動脈の最大内中膜厚 (max-IMT) はSpearmanの順位相関係数による各検査項目との相関分析を行うとともに, 異常肥厚値の1.1mm以上と正常値である同未満で二区分後カイ二乗, またはFisher正確確率検定を用いて分析した. その後従属変数をmax-IMTに設定して重回帰分析, および二項ロジスティック回帰分析を行った. 結果 : 52名中max-IMT≥1.1mm群は11名 (21%) であった. 相関分析で統計学的に有意か, 有意水準境界線上の歯科変数は残存歯数, 平均プロービングポケットデプス (PPD), PPD≥4mm, およびPPD≥6mmの歯数の百分率であった. 重回帰分析の結果max-IMT値の肥厚に対して残存歯数{偏回帰係数 (β) =−0.014, 95%信頼区間 (CI) =−0.024~−0.003, p=0.014}, および高比重リポタンパクコレステロール (β=−0.005, 95%CI=−0.008~−0.002, p=0.003) の減少が有意に関連していた. カイ二乗またはFisher正確確率検定で, 人数分布に統計学的有意差がみられた歯科変数は, 中央値二区分したPPD≥6mmの歯数の百分率であった. 二項ロジスティック回帰分析の結果max-IMT≥1.1mm群に対して, PPD≥6mm歯数割合が中央値 (4.16%) を超える者が有意に関連していた{オッズ比 (OR) =8.275, 95%CI=1.462~46.844, p=0.017}. また男性が有意ではない関連する変数として選択された (OR=4.196, 95%CI=0.914~19.252, p=0.065). 結論 : 脂質異常症患者においてmax-IMTの肥厚と喪失歯数の増加, あるいは重度歯周炎の存在との間に関連が示唆された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.61.132