バイオフィードバック技法による弛緩訓練(<特集>ソヴィエトの心理療法と行動療法)

従来の研究によると,EMG-BFは,深い弛緩状態を誘導するのに有効であるとされてきた。それらの研究では,身体局部の弛緩状態がEMG-BFによって,本人に知らされる方法をとっていた。しかし,筆者らは被験者自らが弛緩状態をどのようにしてもたらすかの意図的関与や心的ストラティジなくしては,EMG-BFの効果は生まれないと考えている。そこで本研究は,EMG-BFでは,訓練中の弛緩効果は認められても,その保持は困難であるという仮説を立て,それらをも実証しようとした。EMGは右側僧帽筋から双極誘導し,それを脳波計で増幅し,インク書きした。EMGは積分計によって,その平均振幅が音に変換され,被験者に与えられ...

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Published in行動療法研究 Vol. 4; no. 1; pp. 18 - 27
Main Authors 佐野, 秀樹, 原野, 広太郎, 森住, 宜司, 沢崎, 達夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本認知・行動療法学会 31.01.1979
日本行動療法学会
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Summary:従来の研究によると,EMG-BFは,深い弛緩状態を誘導するのに有効であるとされてきた。それらの研究では,身体局部の弛緩状態がEMG-BFによって,本人に知らされる方法をとっていた。しかし,筆者らは被験者自らが弛緩状態をどのようにしてもたらすかの意図的関与や心的ストラティジなくしては,EMG-BFの効果は生まれないと考えている。そこで本研究は,EMG-BFでは,訓練中の弛緩効果は認められても,その保持は困難であるという仮説を立て,それらをも実証しようとした。EMGは右側僧帽筋から双極誘導し,それを脳波計で増幅し,インク書きした。EMGは積分計によって,その平均振幅が音に変換され,被験者に与えられた。被験者計15名は,(1)EMG-BF群(BF群),(2)訓練群(R群),(3)統制群(C群)の3群にそれぞれ5名ずつランダムに割り当てられた。第1セッションは任意の訓練法でオペラント水準を見た。第2,第3,第4セッションでは,各被験群にそれぞれの実験条件が導入され,実験された。第5セッションは,各実験条件を除いて,訓練後の弛緩状態をみた。第2〜第4セッションの弛緩訓練は呼吸に応じた肩の弛緩で,第5セッションのR群とBF群は,それぞれ呼吸,BFの弛緩であった。BF群には,弛緩によってBFによる音を低くする(弛緩する)ように教示した。1セッションは約30分で,1日1セッションで,セッション間は2日以内であった。R群は,訓練前半中はあまり弛緩状態にならないが,後半には弛緩し,第5セッションでの保持は最も顕著であった。BF群は訓練中は弛緩するが,保持は十分ではなかった。C群は,あまり弛緩状態にならなかった。この事実はEMGの最大値,最小値ともにいえるが,最小値の方がより顕著である。右肩の主観的弛緩評定でも,R群は訓練が進むに従い高い得点を示すが,BF群は低下していった。このことは,訓練試行の成功感,全身体の弛緩感についてもいえた。心理的平静さについては,C群を含めて,著しい群間差は認められなかった。これらのことから,EMG-BFは,EMG弛緩の情報フィードバックだけでは,弛緩効果を訓練中引き起こすが,訓練後に十分保持されない。EMGの弛緩訓練後の弛緩の保持は,意図的関与をもつ心的ストラティジに依存しているといえる。
ISSN:0910-6529
2424-2594
DOI:10.24468/jjbt.4.1_18