ePTFE 人工血管による腋窩-大腿動脈バイパス術後に発生した広範Seroma の1 例

要旨:人工血管周囲に発生するSeroma は,以前より知られた合併症であるが,広範な発症は稀である.症例は77 歳男性.閉塞性動脈硬化症に対して,右腋窩-右総大腿動脈バイパス,グラフト-右遠位膝窩動脈バイパスをePTFE 人工血管を使用して行った.術後2 カ月後に右腋窩-大腿動脈の人工血管に沿って広範なSeroma を認めた.穿刺排液で改善しないためDacron 人工血管に再置換した.術後は約1 年8 カ月後に癌死するまで,Seroma 再発や下肢虚血症状の増悪を認めなかった.病理組織学検査では,人工血管表面の繊維芽細胞の発達が悪く,線維結合組織は薄かった.何らかの原因でこの層に亀裂が生じ,S...

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Published inJapanese Journal of Vascular Surgery Vol. 24; no. 6; pp. 911 - 914
Main Authors 奥脇, 英人, 橋本, 良一, 伊從, 敬二, 有泉, 憲史, 三森, 義崇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 2015
日本血管外科学会
JAPANESE SOCIETY FOR VASCULAR SURGERY
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.15-00016

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Summary:要旨:人工血管周囲に発生するSeroma は,以前より知られた合併症であるが,広範な発症は稀である.症例は77 歳男性.閉塞性動脈硬化症に対して,右腋窩-右総大腿動脈バイパス,グラフト-右遠位膝窩動脈バイパスをePTFE 人工血管を使用して行った.術後2 カ月後に右腋窩-大腿動脈の人工血管に沿って広範なSeroma を認めた.穿刺排液で改善しないためDacron 人工血管に再置換した.術後は約1 年8 カ月後に癌死するまで,Seroma 再発や下肢虚血症状の増悪を認めなかった.病理組織学検査では,人工血管表面の繊維芽細胞の発達が悪く,線維結合組織は薄かった.何らかの原因でこの層に亀裂が生じ,Seromaが拡大した可能性が考えられた.Seroma の原因や治療方針は不明な点が多いが,別の素材の人工血管に置換すると治癒率が高いと報告されており,本例もこの方法が有効であった.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.15-00016