抗腫瘍免疫能を有するDDSの開発と応用

がんの死亡率は依然としてわが国でもトップであり、その克服を目指して日夜研究が続けられている。がん組織へ抗がん剤をはじめとする治療分子を選択的に送達するDrug delivery system(DDS)についても古くから大きな期待が寄せられ、リポソームや高分子ミセルなどのナノ粒子の開発が進められてきた。しかし抗がん剤や分子標的剤には導入された細胞しか治療できないという限界とともに、それら治療剤に抵抗性のがん細胞が必ずといってよい頻度で出現する。一方、最近、がん治療において革新的な治療法がもたらされつつある。特に、免疫チェックポイントを阻害する抗体療法で代表されるように、新たな観点からの免疫治療剤...

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Published inDrug Delivery System Vol. 32; no. 3; pp. 208 - 217
Main Author 金田, 安史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published Kawasaki 日本DDS学会 01.01.2017
Japan Science and Technology Agency
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ISSN0913-5006
1881-2732
DOI10.2745/dds.32.208

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Summary:がんの死亡率は依然としてわが国でもトップであり、その克服を目指して日夜研究が続けられている。がん組織へ抗がん剤をはじめとする治療分子を選択的に送達するDrug delivery system(DDS)についても古くから大きな期待が寄せられ、リポソームや高分子ミセルなどのナノ粒子の開発が進められてきた。しかし抗がん剤や分子標的剤には導入された細胞しか治療できないという限界とともに、それら治療剤に抵抗性のがん細胞が必ずといってよい頻度で出現する。一方、最近、がん治療において革新的な治療法がもたらされつつある。特に、免疫チェックポイントを阻害する抗体療法で代表されるように、新たな観点からの免疫治療剤への期待が高まっている。DDSにおいても抗腫瘍免疫を活性化するアプローチが望ましいのではないかと考えられている。筆者らは、Hemagglutinating virus of Japan(HVJ、Sendai virus)を不活性化した粒子HVJ-envelope(HVJ-E)自体に抗腫瘍免疫活性化やがん細胞選択的細胞死誘導作用があることを見出し、その粒子内に治療分子を封入し、さらに抗腫瘍活性を高めることに成功した。HVJ-Eの臨床応用を進めつつ、ベクターとして治療分子を封入し治療効果の増強を動物実験で検証し、次の臨床応用を目指している。
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ISSN:0913-5006
1881-2732
DOI:10.2745/dds.32.208