In vitroにおけるエナメル質の脱灰に及ぼす糖タンパク質およびフッ化物応用の影響

エナメル質試料に対し,異なる局所的フッ化物応用を試みたうえで,各種濃度の糖タンパク質を介在させた環境における経時的な脱灰過程のモニタリングを行うことにより,脱灰抑制に影響を及ぼすフッ化物応用の種類および糖タンパク質の濃度についてIn vitro環境下で検討した.ウシ鏡面研磨エナメル質を,ムチン非添加および3種類の異なる濃度になるようにムチンを添加した脱灰溶液に浸漬した.各ムチン濃度におけるエナメル質試料は,脱灰溶液のみに浸漬した対照群, 1日3回フッ化物配合歯磨剤溶液に5分間浸漬したフッ化物配合歯磨剤群,実験開始前にAPFゲルを5分間作用させたAPF群に分け,フッ化物応用を行った.エナメル質試...

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Published in口腔衛生学会雑誌 Vol. 57; no. 2; pp. 126 - 135
Main Authors 田治米, 元信, 川崎, 弘二, 神原, 正樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 2007
日本口腔衛生学会
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Summary:エナメル質試料に対し,異なる局所的フッ化物応用を試みたうえで,各種濃度の糖タンパク質を介在させた環境における経時的な脱灰過程のモニタリングを行うことにより,脱灰抑制に影響を及ぼすフッ化物応用の種類および糖タンパク質の濃度についてIn vitro環境下で検討した.ウシ鏡面研磨エナメル質を,ムチン非添加および3種類の異なる濃度になるようにムチンを添加した脱灰溶液に浸漬した.各ムチン濃度におけるエナメル質試料は,脱灰溶液のみに浸漬した対照群, 1日3回フッ化物配合歯磨剤溶液に5分間浸漬したフッ化物配合歯磨剤群,実験開始前にAPFゲルを5分間作用させたAPF群に分け,フッ化物応用を行った.エナメル質試料の脱灰程度はQLF法によって解析して評価を行った.その結果,ムチンが唾液中に存在すれば,脱灰を抑制する機能が発揮されていることが明らかとなったが,ムチンのみでは完全に脱灰を抑制することはできないことも同時に明らかとなった.また, APFの応用は高い脱灰抑制効果を導くことが明らかとなった.さらに,口腔内にムチンが存在すれば,フッ化物配合歯磨剤による低濃度のフッ化物の持続的な応用であったとしても,脱灰は高度に抑制されることも明らかとなった.すなわち, QLF法を応用し,個々の歯面における歯の健康状態を検出・診断したうえで,フッ化物局所応用プログラムを策定することが必要である可能性が示唆された.
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.57.2_126