自己組織化抗酸化ナノ粒子による新規臓器保護法の開発

虚血となった臓器に血液が再灌流することで発生する活性酸素(ROS)は,marginal graftにおいて強い虚血再灌流障害を引き起し,グラフト機能不全を引き起こす.また,慢性期においても,グラフト廃絶のリスクを増加させるため,再灌流時に発生する「悪玉」ROSを除去することはグラフト長期生着の鍵となる.過去に様々な抗酸化剤を用いて「悪玉」ROSを除去する試みが行われてきたが,正常細胞内のレドックス反応をも破壊し,全細胞死をもたらすために実用化されてこなかった.我々が開発した安全性の高い自己組織化抗酸化ナノ粒子製剤(redox nanoparticles,RNP)は虚血再灌流時に産生される「悪玉...

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Published inOrgan Biology Vol. 32; no. 1; pp. 011 - 024
Main Authors 高橋, 一広, 杉, 朋幸, 丸島, 愛樹, 長崎, 幸夫, 金, 在檉, 古屋, 欽司, 中橋, 宏充, 小田, 竜也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臓器保存生物医学会 2025
日本臓器保存生物医学会
The Japan Society for Organ Preservation and Biology
Subjects
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ISSN1340-5152
2188-0204
DOI10.11378/organbio.32.011

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Summary:虚血となった臓器に血液が再灌流することで発生する活性酸素(ROS)は,marginal graftにおいて強い虚血再灌流障害を引き起し,グラフト機能不全を引き起こす.また,慢性期においても,グラフト廃絶のリスクを増加させるため,再灌流時に発生する「悪玉」ROSを除去することはグラフト長期生着の鍵となる.過去に様々な抗酸化剤を用いて「悪玉」ROSを除去する試みが行われてきたが,正常細胞内のレドックス反応をも破壊し,全細胞死をもたらすために実用化されてこなかった.我々が開発した安全性の高い自己組織化抗酸化ナノ粒子製剤(redox nanoparticles,RNP)は虚血再灌流時に産生される「悪玉」ROSを“選択的”に除去し,虚血再灌流障害を抑制することが可能である.脳梗塞再灌流をはじめとする虚血再灌流障害モデルだけでなく,ROSによる酸化ストレスが本態となる,潰瘍性大腸炎,痴呆,放射線障害などのモデルにおいてもRNPの有用性が示された.今回,我々は新たに肝虚血再灌流障害モデルにおいて,RNPが虚血再灌流障害を低減する可能性を示すことができた.今後,RNPの臓器移植分野での成果が期待される.
ISSN:1340-5152
2188-0204
DOI:10.11378/organbio.32.011