「がん治療における術中蛍光イメージングの発展」の特集によせて

近年, 生体蛍光イメージングを応用し, 手術中に癌や解剖学的構造を描出する技術が様々な分野で臨床応用され始めています. 今回, 特に癌に対する手術にfocusし, 術中蛍光イメージングの基本的事項から応用法までを紹介する特集を組ませて頂きました. 実臨床で使用可能な蛍光試薬の代表はインドシアニングリーン(ICG)と5-アミノレブリン酸です. ICGは, 50年以上にわたり肝機能検査薬として本邦で広く用いられてきた歴史があります. 2000年頃から近赤外領域の蛍光特性が注目され, また赤外観察装置の発展も相まって, 術中蛍光イメージング用試薬としての利用機会が拡大しています. 5-アミノレブリン...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 43; no. 4; p. 293
Main Authors 石沢, 武彰, 杉本, 健樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本レーザー医学会 15.01.2023
日本レーザー医学会
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Summary:近年, 生体蛍光イメージングを応用し, 手術中に癌や解剖学的構造を描出する技術が様々な分野で臨床応用され始めています. 今回, 特に癌に対する手術にfocusし, 術中蛍光イメージングの基本的事項から応用法までを紹介する特集を組ませて頂きました. 実臨床で使用可能な蛍光試薬の代表はインドシアニングリーン(ICG)と5-アミノレブリン酸です. ICGは, 50年以上にわたり肝機能検査薬として本邦で広く用いられてきた歴史があります. 2000年頃から近赤外領域の蛍光特性が注目され, また赤外観察装置の発展も相まって, 術中蛍光イメージング用試薬としての利用機会が拡大しています. 5-アミノレブリン酸を用いた蛍光イメージングは, 癌細胞特有の代謝経路を活用したものです. すでに脳腫瘍や膀胱癌の光線力学的診断(PDD)に臨床応用されており, 光線力学的治療(PDT)への応用も期待されています. これらの蛍光イメージングの主な用途は, i)血流の評価, ii)解剖構造の描出, iii)癌組織の描出, iv)リンパ節およびリンパ管の描出, に分類され, 現在はほぼあらゆる外科領域で, この4つの用途のうち「いずれか」が活用されている, と言えます. 本特集では, 多くの専門分野の中から消化管癌治療(吉田昌先生), 肝胆膵外科領域(冨岡幸大先生), 肺癌治療(芳川豊史先生), 乳癌治療(多田真奈美先生)をピックアップし, 各著者の先生方に「なぜ蛍光イメージングが必要か」,「効果的に実施するコツは何か」などについて実践的に解説して頂きました. また, 各分野を橋渡しするトピックとして, 並川努先生にICGと5-アミノレブリン酸の特徴と使い分けについて, 佐藤隆幸先生にはカラー像に近赤外イメージを重畳できる国産蛍光カメラシステム開発の経緯についてご寄稿頂きました. 6名の先生方には, この場をお借りして厚く御礼申し上げます. 今回の特集が, まさに蛍光イメージングを実践しようとする外科医の先生方だけでなく, 手術室の看護師や臨床工学士, 生体蛍光イメージング開発に取り組む研究者, メーカー担当者の皆様にとって有益な情報となることを願っております.
ISSN:0288-6200
1881-1639
DOI:10.2530/jslsm.jslsm-43_0048