病院到着前より脳低温療法を導入し良好な転帰を得た院外心停止の1例

症例は56歳,男性.勤務中に倒れている患者を同僚が発見し,胸骨圧迫を開始するとともに救急要請した.先着した所轄救急隊が心肺停止および初期調律として心室細動を確認し自動体外式除細動器にて除細動を施行したが心拍再開しなかった.ドクターカーである特別救急隊が現場に到着し,同乗医師が冷却輸液 (4℃) で静脈路を確保しエピネフリン1mgを静注したところ,最終目撃から30分で自己心拍が再開した.心拍再開するも深昏睡 (Glasgow coma scale 3) であり,脳低温療法を導入するため用手加圧による冷却輸液の急速投与を行った.病院到着までの7分間の輸液量は1,100mLで病院到着時の膀胱温は35...

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Published inShinzo Vol. 42; no. 3; pp. 376 - 380
Main Authors 大石, 泰男, 筈井, 寛, 西原, 功, 頭司, 良介, 森, 敏純, 小畑, 仁司, 秋元, 寛, 川上, 真樹子, 八木, 良樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2010
日本心臓財団
Japan Heart Foundation
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.42.376

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Summary:症例は56歳,男性.勤務中に倒れている患者を同僚が発見し,胸骨圧迫を開始するとともに救急要請した.先着した所轄救急隊が心肺停止および初期調律として心室細動を確認し自動体外式除細動器にて除細動を施行したが心拍再開しなかった.ドクターカーである特別救急隊が現場に到着し,同乗医師が冷却輸液 (4℃) で静脈路を確保しエピネフリン1mgを静注したところ,最終目撃から30分で自己心拍が再開した.心拍再開するも深昏睡 (Glasgow coma scale 3) であり,脳低温療法を導入するため用手加圧による冷却輸液の急速投与を行った.病院到着までの7分間の輸液量は1,100mLで病院到着時の膀胱温は35℃であった.各種検査より急性心筋梗塞による心室細動と診断した.冷却輸液の急速投与は中止し,胃内への冷却水の注入を行いつつ冠動脈造影検査を施行した.左主幹部病変を含む多枝病変と判明し血栓溶解薬投与,大動脈バルーンパンピング留置後集中治療室 (ICU) に入室した.ICU入室後は冷却マットを用い体温管理を行い,目標体温は膀胱温で34±0.5℃に設定した.覚知から111分で目標体温に到達し,24時間脳低温療法を施行したところ明らかな神経学的後遺症なく回復した.目撃のない心室細動症例ではあるが,病院前より脳低温療法を導入し,満足のいく神経学的転帰を得ることができた症例であり報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.42.376