ブドウ球菌塗布後の創面の経時的変化—創感染動物モデルを用いた研究

【目的】創部・穿刺部の感染症の予防に役立てるために,動物で感染モデルを作製する.【方法】感染モデルとして,マウスの背部の皮膚欠損創に黄色ブドウ球菌を塗布し,創面の変化を組織学的・定量培養的に,経時的に検討した.菌の塗布24時間後まで3時間ごとに,以後48時間後と120時間後に7匹ずつを犠死させ,5匹は凍結保存し創部を定量培養した.2匹は,5%ホルマリン固定し創部の組織を観察した.【結果】菌を塗布した6時間後では,創部の炎症細胞浸潤はなかった.9時間後では創表面に菌が増殖,分布し,菌を貪食した好中球が多数浸潤していた.12時間後から21時間後まで,時間の経過に伴い細菌数は有意の直線相関で増加した...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 21; no. 2; pp. 86 - 91
Main Authors 仁田原, 慶一, 原賀, 勇壮, 自見, 至郎, 比嘉, 和夫, 香取, 清, 大慈弥, 裕之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本ペインクリニック学会 2014
日本ペインクリニック学会
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ISSN1340-4903
1884-1791
DOI10.11321/jjspc.13-0055

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Summary:【目的】創部・穿刺部の感染症の予防に役立てるために,動物で感染モデルを作製する.【方法】感染モデルとして,マウスの背部の皮膚欠損創に黄色ブドウ球菌を塗布し,創面の変化を組織学的・定量培養的に,経時的に検討した.菌の塗布24時間後まで3時間ごとに,以後48時間後と120時間後に7匹ずつを犠死させ,5匹は凍結保存し創部を定量培養した.2匹は,5%ホルマリン固定し創部の組織を観察した.【結果】菌を塗布した6時間後では,創部の炎症細胞浸潤はなかった.9時間後では創表面に菌が増殖,分布し,菌を貪食した好中球が多数浸潤していた.12時間後から21時間後まで,時間の経過に伴い細菌数は有意の直線相関で増加した.48時間後には,表層の硝子様物質と壊死物質は,内部に菌が局在した状態で,創表面の肉芽組織から剥離し始めていた.21~120時間後は,有意な負の直線相関で,細菌数は減少した.【結論】このモデルは,生体における創部,穿刺部感染の成立およびその後の生体反応の経時的変化をin vivoで初めて示したものである.今後の創部,穿刺部の感染の予防・治療の研究に有用と考える.
ISSN:1340-4903
1884-1791
DOI:10.11321/jjspc.13-0055