法科学と科学捜査

「1. はじめに」 情報化社会の発達に伴う匿名性の高い犯罪の出現, 裁判員裁判制度の導入, 取調べの可視化の義務化に伴う被疑者の黙秘傾向の増加などの観点から, 犯罪捜査における客観証拠の重要性がますます高まっている. これらに対応するため, 捜査機関においては客観証拠に基づく確実な犯罪の立証が強く求められている. すなわち, DNA型鑑定や画像解析, 薬毒物事案における化学鑑定など, 様々な科学技術等を活用して被疑者の特定や犯罪の立証を行うことは, 現在では不可欠なものとなっている. 法科学とは, 司法裁判上の諸問題の解決に役立つ 科学を研究し, その成果を基盤として実際の事件の解決に応用する...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 139; no. 5; pp. 685 - 691
Main Author 井上, 博之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.05.2019
日本薬学会
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Summary:「1. はじめに」 情報化社会の発達に伴う匿名性の高い犯罪の出現, 裁判員裁判制度の導入, 取調べの可視化の義務化に伴う被疑者の黙秘傾向の増加などの観点から, 犯罪捜査における客観証拠の重要性がますます高まっている. これらに対応するため, 捜査機関においては客観証拠に基づく確実な犯罪の立証が強く求められている. すなわち, DNA型鑑定や画像解析, 薬毒物事案における化学鑑定など, 様々な科学技術等を活用して被疑者の特定や犯罪の立証を行うことは, 現在では不可欠なものとなっている. 法科学とは, 司法裁判上の諸問題の解決に役立つ 科学を研究し, その成果を基盤として実際の事件の解決に応用する学問である. 法科学という用語は国際的には法医学を包括する概念であるが, 日本では狭義の法科学, すなわち犯罪鑑識科学の意味で用いられることが多く, 法生物学, 法化学(裁判化学), 法工学, 法心理学, 法文書, 現場鑑識などの分野に細分化され, 様々な科学技術・手法が科学捜査に活用されている.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.18-00166-1