高槻市における院外心停止症例に対する病院前低体温療法の試み

院外心室細動 (ventricular fibrillation ; VF) への低体温療法の有用性が示され動物実験ではより早期からの導入が神経学的転帰を改善させることが示されている. 当院が所在する高槻市ではドクターカーを活用し, 医師による冷却輸液を用いた病院前からの低体温療法が可能である. 今回, 病院前診療でどの程度冷却輸液を投与できるかを, その効果および安全性とともに検討した. 研究対象期間に病院前で自己心拍再開後に低体温療法を導入した10例を対象とした. 冷却輸液投与可能時間は平均13分で輸液量は平均744mLであった. 初回膀胱温は35.1°C, 目標体温34±0.5°Cの到達...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inShinzo Vol. 47; no. 3; pp. 315 - 321
Main Authors 頭司, 良介, 筈井, 寛, 大石, 泰男, 秋元, 寛, 後藤, 拓也, 八木, 良樹, 森, 敏純, 清水, 木綿
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2015
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.47.315

Cover

More Information
Summary:院外心室細動 (ventricular fibrillation ; VF) への低体温療法の有用性が示され動物実験ではより早期からの導入が神経学的転帰を改善させることが示されている. 当院が所在する高槻市ではドクターカーを活用し, 医師による冷却輸液を用いた病院前からの低体温療法が可能である. 今回, 病院前診療でどの程度冷却輸液を投与できるかを, その効果および安全性とともに検討した. 研究対象期間に病院前で自己心拍再開後に低体温療法を導入した10例を対象とした. 冷却輸液投与可能時間は平均13分で輸液量は平均744mLであった. 初回膀胱温は35.1°C, 目標体温34±0.5°Cの到達時間は186分であった. 500mL以上投与した群では有意に初回膀胱温が低く (34.8 vs. 35.8°C, p=0.027), 目標体温到達時間が早い傾向にあった (126 vs. 326分, p=0.052). しかし, 神経学的転帰に差はなかった. 院外VF心停止で病院到着後に低体温療法を開始した8例と, 合併症について比較したが, 来院時に肺うっ血をきたす傾向があるも呼吸状態は悪化させず, 転帰にも影響を与えなかった. また難治性VFに対し経皮的人工心肺補助 (percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS) 導入を前提に心停止中より病院前低体温療法導入を行った6例についても検討したが, 虚脱からPCPS導入が平均54分と時間的に厳しい条件ながら4例で良好な神経学的転帰を得た. 冷却輸液を用いた病院前低体温療法は日本の中規模都市でも安全かつ迅速に行うことができたが, 神経学的転帰の改善は明らかではなかった. 心停止中からの導入を含めさらなる研究が望まれる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.47.315