ピクリン酸の媒染剤としての有用性―ピクリン酸加温条件下でアザン染色の染色性は改善される

ホルマリン単独固定を行うようになって以来,アザン染色をはじめとする膠原線維染色では膠原線維と他の組織成分を明瞭に染め分けることが期待できなくなった。そのため,10%重クロム酸カリウム・10%トリクロロ酢酸等量混合液による媒染剤が考案され,現在一般的に利用されている。しかし,重クロム酸カリウムは危険性の高い試薬であり,代替媒染剤の必要性は高い。そこで,アザン染色における数種類の媒染剤の有用性を検討した。その結果,ブアン液およびピクリン酸単独使用による媒染効果が認められ,膠原線維と他の組織成分との関係を明瞭に染め分けることが可能であった。ブアン液は特別化学物質障害予防規則で規制されるホルマリンを含...

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Published inJapanese Journal of Medical Technology Vol. 65; no. 1; pp. 78 - 83
Main Authors 福井, 義雅, 西川, 武, 田中, 京子, 鈴木, 久恵, 松尾, 郁, 竹内, 真央, 大林, 千穂, 龍見, 重信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.01.2016
日本臨床衛生検査技師会
Japanese Association of Medical Technologists
Subjects
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ISSN0915-8669
2188-5346
DOI10.14932/jamt.15-11

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Summary:ホルマリン単独固定を行うようになって以来,アザン染色をはじめとする膠原線維染色では膠原線維と他の組織成分を明瞭に染め分けることが期待できなくなった。そのため,10%重クロム酸カリウム・10%トリクロロ酢酸等量混合液による媒染剤が考案され,現在一般的に利用されている。しかし,重クロム酸カリウムは危険性の高い試薬であり,代替媒染剤の必要性は高い。そこで,アザン染色における数種類の媒染剤の有用性を検討した。その結果,ブアン液およびピクリン酸単独使用による媒染効果が認められ,膠原線維と他の組織成分との関係を明瞭に染め分けることが可能であった。ブアン液は特別化学物質障害予防規則で規制されるホルマリンを含み,ケミカルハザードの問題がある。したがって,アザン染色の媒染剤として飽和ピクリン酸単独使用により60℃30分作用させる方法は,従来の10%重クロム酸カリウム・10%トリクロロ酢酸等量混合液に替わりうる。そして,より安全かつ良好な染色性が得られるため,普及することが望まれる。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.15-11