急性冠症候群患者における短期予後予測因子としての乳酸値クリアランスの有用性に関して

背景および目的 : 急性冠症候群患者の短期予後予測因子として, 古典的危険因子だけでなく初回乳酸値の有用性が散見されている. 今回初回乳酸値だけでなく, 乳酸値クリアランスの短期予後予測因子としての有用性について検討を行った.方法 : 2007年1月から2014年3月までの緊急カテーテル治療が行われ, 集中治療室への入室を要した急性冠症候群患者を対象とした. 初療室および集中治療室へ入室後6時間から24時間内に乳酸値の測定が行われた連続297例を対象とし, 後ろ向きに検討した. 乳酸値クリアランスは, (初回乳酸値-6時間から24時間内に測定した乳酸値) ÷初回乳酸値×100 (%) で計測し...

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Published inShinzo Vol. 48; no. 5; pp. 513 - 521
Main Authors 林, 康彦, 川瀬, 共治, 山根, 健一, 藤井, 裕人, 三戸, 森児, 沖本, 智和, 香川, 雄三, 塩出, 宣雄, 植田, 裕介, 加藤, 康子, 村岡, 裕司, 為清, 博道, 廣延, 直也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2016
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.48.513

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Summary:背景および目的 : 急性冠症候群患者の短期予後予測因子として, 古典的危険因子だけでなく初回乳酸値の有用性が散見されている. 今回初回乳酸値だけでなく, 乳酸値クリアランスの短期予後予測因子としての有用性について検討を行った.方法 : 2007年1月から2014年3月までの緊急カテーテル治療が行われ, 集中治療室への入室を要した急性冠症候群患者を対象とした. 初療室および集中治療室へ入室後6時間から24時間内に乳酸値の測定が行われた連続297例を対象とし, 後ろ向きに検討した. 乳酸値クリアランスは, (初回乳酸値-6時間から24時間内に測定した乳酸値) ÷初回乳酸値×100 (%) で計測した.結果 : 短期死亡 (30日死亡) は37例 (12.5%) に認められた. ROC曲線からのCut-off pointは初回乳酸値が3.9mmol/L, 乳酸値クリアランスは25%であった. ロジスティック回帰分析による多変量解析では乳酸値クリアランス<25% (OR, 111.2 ; 95%CI, 12.5-2534.1 ; p<0.0001) は独立した予後予測因子となった. 初回乳酸値3.9mmol/Lおよび乳酸値クリアランス25%で4群に分けて生存率の検討を行った. 短期死亡は初回乳酸値≦3.9mmol/L+乳酸値クリアランス≧25%の群では4.1%, 初回乳酸値≦3.9mmol/L+乳酸値クリアランス<25%の群では9.6%, 初回乳酸値>3.9mmol/L+乳酸値クリアランス≧25%で12.5%, 初回乳酸値>3.9mmol/L+乳酸値クリアランス<25%で100%であった (log-rank p<0.0001).結論 : 乳酸値クリアランスの計測は急性冠症候群患者の短期予後予測因子として有用であり, 特に初回乳酸値が高い群では有用であると考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.48.513