人工弁機能不全を繰り返した好酸球増多症候群の1例

症例は59歳の女性, 主訴は呼吸困難. 1995年に僧帽弁狭窄症 (原因不明) に対して僧帽弁置換術 (機械弁SJM 27mm) 施行後の患者. 2012年3月に僧帽弁位機能不全による急性心不全の診断で, 再度, 僧帽弁置換術 (機械弁ATS 27mm) が施行された. 術中所見では血栓弁であった. 術後脳梗塞でリハビリ中, 就寝中に呼吸困難感増悪したため, 精査加療目的に転科となった. 心エコーおよび透視でstuck valveを認め, 再び人工弁機能不全と判断した. ワルファリンコントロールは良好 (PT-INR 2.3-4.0) であったが, 以前から好酸球増多 (好酸球30-70%)...

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Published inShinzo Vol. 47; no. 2; pp. 218 - 223
Main Authors 不破, 貴史, 渋井, 敬志, 松下, 紀子, 大島, 杏子, 佐伯, 仁, 畑, 明宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2015
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
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Summary:症例は59歳の女性, 主訴は呼吸困難. 1995年に僧帽弁狭窄症 (原因不明) に対して僧帽弁置換術 (機械弁SJM 27mm) 施行後の患者. 2012年3月に僧帽弁位機能不全による急性心不全の診断で, 再度, 僧帽弁置換術 (機械弁ATS 27mm) が施行された. 術中所見では血栓弁であった. 術後脳梗塞でリハビリ中, 就寝中に呼吸困難感増悪したため, 精査加療目的に転科となった. 心エコーおよび透視でstuck valveを認め, 再び人工弁機能不全と判断した. ワルファリンコントロールは良好 (PT-INR 2.3-4.0) であったが, 以前から好酸球増多 (好酸球30-70%) を認めていた. 再手術から短期間で弁機能不全を認めたことから, 好酸球増多に起因した, 血栓弁による再発性人工弁機能不全と判断した. 全身状態から再々手術は困難と考え, ステロイド投与, ならびに血栓溶解療法を開始した. その結果, 弁の可動性は徐々に改善し, 両方の弁の可動性の改善を認め, 手術を回避しえた. 好酸球増多症は, 原因不明の末梢血中の好酸球の増加を特徴とする疾患である. 過剰な好酸球は心内膜, 心筋へ作用することで, 血栓傾向を助長し, 弁置換術後の患者における再発性人工弁機能不全の原因となることが知られている. 好酸球増多症候群による再発性人工弁機能不全症と診断し, ステロイド投与と血栓溶解療法により, 弁の機能が改善し, 手術を回避しえた極めて稀な症例である.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.47.218