β遮断薬療法が奏効した孤立性左室緻密化障害の成人例

症例は36歳,男性.2週間前から労作時息切れが出現したため近医を受診し,心拡大を指摘され精査・加療目的に当院に紹介された.来院時,Ⅲ音を聴取し,心エコー図検査では左室拡大,びまん性の高度左室壁運動低下(左室駆出率32%),左室心尖部を主体とする網目状の肉柱形成が目立った.うっ血性心不全に対する薬物治療後,施行した心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄を認めず,虚血性心筋症は否定的であった.左室心筋の緻密化層(C)と非緻密化層(NC)の比(NC/C比)は,心エコー図検査および心臓MRI検査のそれぞれにおいて2.2および2.5であり,孤立性左室緻密化障害と診断した.左室収縮不全に対してβ遮断薬療法...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inShinzo Vol. 49; no. 9; pp. 960 - 965
Main Authors 伊勢, 孝之, 山田, 博胤, 行重, 佐和香, 西條, 良仁, 若槻, 哲三, 楠瀬, 賢也, 佐田, 政隆, 林, 修司, 八木, 秀介, 添木, 武, 山口, 浩司, 瀬野, 弘光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.09.2017
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.49.960

Cover

More Information
Summary:症例は36歳,男性.2週間前から労作時息切れが出現したため近医を受診し,心拡大を指摘され精査・加療目的に当院に紹介された.来院時,Ⅲ音を聴取し,心エコー図検査では左室拡大,びまん性の高度左室壁運動低下(左室駆出率32%),左室心尖部を主体とする網目状の肉柱形成が目立った.うっ血性心不全に対する薬物治療後,施行した心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄を認めず,虚血性心筋症は否定的であった.左室心筋の緻密化層(C)と非緻密化層(NC)の比(NC/C比)は,心エコー図検査および心臓MRI検査のそれぞれにおいて2.2および2.5であり,孤立性左室緻密化障害と診断した.左室収縮不全に対してβ遮断薬療法を開始したところ,体重は約5 kg減少し,胸部X線写真で肺うっ血が改善し,BNPも低下したため退院となった.約1年後の左室駆出率は51%と改善し,NYHA class Ⅰとなり心不全は安定した.左室緻密化障害は,左室心筋が緻密化層と非緻密化層の二層構造を呈し,過剰な肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とする疾患である.本症は小児期の稀な疾患とされていたが,画像診断の発達により成人期の発見例が増加し,左室駆出率低下例における鑑別疾患として重要である.我々は,β遮断薬療法により左室駆出率の改善,心不全病態の安定が得られた左室緻密化障害の成人例を経験したため報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.49.960