合併する心筋障害に抗結核薬およびステロイドの投与が奏功した結核性心膜炎の1例

結核性心膜炎に心筋障害を合併した症例を経験した.症例は72歳男性で両側下腿浮腫および労作時呼吸困難を主訴に近医を受診し,うっ血性心不全と診断され利尿薬などの加療が開始された.しかし,治療は奏功せず利尿薬抵抗性の心不全の診断で当院に紹介となった.心エコーで多量の心嚢水,著明な心膜肥厚,左室機能不全(左室駆出率35%)を認めた.約500 mLの心嚢水をドレナージしたところ心嚢腔圧は正常化したものの,平均右房圧は19 mmHgから16 mmHgと低下に乏しく,両心カテーテル検査にて右室圧はdip and plateauパターンであり,右室・左室の拡張期圧の等圧化を認め,奇脈,左室・右室の収縮期圧の乖...

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Published inShinzo Vol. 49; no. 2; pp. 146 - 152
Main Authors 丸田, 俊介, 中川, 大嗣, 青沼, 和隆, 石津, 智子, 山本, 昌良, 瀬尾, 由広
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.02.2017
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.49.146

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Summary:結核性心膜炎に心筋障害を合併した症例を経験した.症例は72歳男性で両側下腿浮腫および労作時呼吸困難を主訴に近医を受診し,うっ血性心不全と診断され利尿薬などの加療が開始された.しかし,治療は奏功せず利尿薬抵抗性の心不全の診断で当院に紹介となった.心エコーで多量の心嚢水,著明な心膜肥厚,左室機能不全(左室駆出率35%)を認めた.約500 mLの心嚢水をドレナージしたところ心嚢腔圧は正常化したものの,平均右房圧は19 mmHgから16 mmHgと低下に乏しく,両心カテーテル検査にて右室圧はdip and plateauパターンであり,右室・左室の拡張期圧の等圧化を認め,奇脈,左室・右室の収縮期圧の乖離を認めたことから滲出性収縮性心膜炎の病態が疑われた.後日,心嚢水の培養から結核菌が検出され結核性心膜炎の診断に至った.心筋生検では結核菌は検出されないものの,軽度の炎症細胞浸潤や細胞質の空胞変性等の心筋障害所見を認めた.結核性心膜炎に対し抗結核薬およびステロイド投与による加療を開始したところ左室機能の著しい改善を認め,本症例の心筋病変は経過から結核性心筋炎を合併していた可能性が高いと考えられた.結核性心筋炎の報告は稀であり,結核性心筋炎が抗結核薬,ステロイドの投与により奏功したという報告も極めて稀であり報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.49.146