半導体レーザー照射によるラット脛骨の骨治癒における組織学的実験

骨の治癒時間を短縮することは,インプラントや歯周治療などにおいて重要である.近年では,超音波およびマイクロ波などの物理的刺激が,骨の治癒を促進させることや骨再生のための強力な治療機器となることが実証されている.さらに,レーザー照射においても骨形成を刺激することが報告されている.しかしながら,レーザー照射により変化した骨の組織学的考察を報告する研究は多くない.本研究の目的は,半導体レーザー(波長910 nm)を照射し,ラット脛骨の治癒における組織学的変化を調べることである.レーザー照射は,出力を0 J,40 J,80 J,および120 J とし,ラット脛骨骨欠損部位にレーザー照射を行い,実験群を...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 37; no. 1; pp. 80 - 86
Main Authors 菊井, 徹哉, 横瀬, 敏志, 山﨑, 崇秀
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 特定非営利活動法人 日本レーザー医学会 2016
日本レーザー医学会
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ISSN0288-6200
1881-1639
DOI10.2530/jslsm.jslsm-37_0011

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Summary:骨の治癒時間を短縮することは,インプラントや歯周治療などにおいて重要である.近年では,超音波およびマイクロ波などの物理的刺激が,骨の治癒を促進させることや骨再生のための強力な治療機器となることが実証されている.さらに,レーザー照射においても骨形成を刺激することが報告されている.しかしながら,レーザー照射により変化した骨の組織学的考察を報告する研究は多くない.本研究の目的は,半導体レーザー(波長910 nm)を照射し,ラット脛骨の治癒における組織学的変化を調べることである.レーザー照射は,出力を0 J,40 J,80 J,および120 J とし,ラット脛骨骨欠損部位にレーザー照射を行い,実験群を2 群に分けた.実験群1 は,各エネルギーで照射を14 日目まで毎日行い,実験群2 は21 日間の実験期間中に120 J の出力で照射を7 日目まで継続し,その後は照射を行わなかった.脛骨は3,7,14,21 日目で摘出し,連続切片とした.骨形成の骨形態計測は,H-E 染色およびカルセイン標識切片上で実施した. 実験1 において,7 日目の骨形成はレーザー照射により刺激され,さらにその効果はレーザーのエネルギーに依存していた.しかし14 日目では,骨量はレーザーのエネルギーに反比例して減少していた. 実験2 において, 7 日目までレーザーの照射(120 J)を行った脛骨は,骨修復の促進が観察され,レーザー照射された脛骨における骨形成量は,14 日目の対照群と比較して有意に多かった.しかしながら,21 日目になると,レーザー照射群と対照群間における脛骨の骨量に差はみられなかった.これらの結果より,半導体レーザー照射は骨修復過程の初期段階において骨形成を強く誘導し,そして照射エネルギーに依存していることが示唆された.しかし,骨組織への長期間の過度なレーザー照射は骨の修復過程を妨げた.半導体レーザーが骨再生に利用可能であるが,レーザーの照射時間と照射エネルギーに対する考慮が重要であると考えられる.
ISSN:0288-6200
1881-1639
DOI:10.2530/jslsm.jslsm-37_0011