「食道癌に対するPDT」の特集によせて

わが国における食道癌に対する標準治療は, 術前化学療法+外科切除であるが, 化学放射線療法(Chemoradio Therapy: CRT)は, 臓器および機能温存が可能な非外科的治療であり, 選択肢の一つとして重要である. CRTは, 高い奏効率が得られる一方, 局所の遺残・再発率が約40%にのぼるため, 救済治療が予後改善にとって重要である. 食道癌CRT後の救済治療として, 一般に外科手術が行われるが, 術後の合併症の頻度が高く, 治療関連死が10-15%に及ぶとも報告され, 根治的かつ低侵襲な救済治療の開発が急務であった. 医師主導治験によるCRTまたは放射線療法(Radiation...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 40; no. 1; p. 56
Main Author 武藤, 学
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本レーザー医学会 15.04.2019
日本レーザー医学会
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ISSN0288-6200
1881-1639
DOI10.2530/jslsm.jslsm-40_0017

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Summary:わが国における食道癌に対する標準治療は, 術前化学療法+外科切除であるが, 化学放射線療法(Chemoradio Therapy: CRT)は, 臓器および機能温存が可能な非外科的治療であり, 選択肢の一つとして重要である. CRTは, 高い奏効率が得られる一方, 局所の遺残・再発率が約40%にのぼるため, 救済治療が予後改善にとって重要である. 食道癌CRT後の救済治療として, 一般に外科手術が行われるが, 術後の合併症の頻度が高く, 治療関連死が10-15%に及ぶとも報告され, 根治的かつ低侵襲な救済治療の開発が急務であった. 医師主導治験によるCRTまたは放射線療法(Radiation Therapy: RT)後の局所遺残再発食道癌に対する光線力学的療法(Photodynamic Therapy: PDT)の開発が行われ, 主要評価項目である局所の完全奏効割合が88.5%と極めて高い有効性を示したことより, 2015年5月にタラポルフィンナトリウム(レザフィリン)および半導体レーザ(PDレーザ)が薬事承認・保険収載された. これは, 世界でも初めての成果であり, わが国が誇る最新技術とも言える. 実臨床でCRTまたはRTの局所遺残再発食道癌に対するPDTを実施するためには, 日本光線力学学会が主催する講習会受講が必須とされ, 2018年4月現在で全国118施設326名の医師が受講済みで, 25の医療機関に機器が導入されている. このように, CRTまたはRTの局所遺残再発食道癌に対するPDTは全国に広がりつつあり, 低侵襲な治療で根治が期待できる症例が増えている. 本特集では, 「薬事承認後の実臨床における臨床成績」「PDT特有の日光過敏症対策」「光線過敏症モニタリング法の開発」「再PDTの有効性」「食道癌に対するPDTの患者管理」を特集として取りあげ, 実臨床に有益な情報となることを期待している.
ISSN:0288-6200
1881-1639
DOI:10.2530/jslsm.jslsm-40_0017