精神遅滞,極度狭窄鼻腔および高度開口障害を伴う筋突起過長症患者の周術期管理経験

今回われわれは,精神遅滞,極度狭窄鼻腔および高度開口障害を伴う筋突起過長症患者の周術期管理を経験したので報告する.症例は28歳,女性.齲歯治療のため近医受診するも,開口制限があり精神遅滞も有するため障害者歯科および歯科口腔外科を紹介受診.画像検査などから筋突起過長症と診断され筋突起切除手術が予定された.開口量が約10mmであることに加え鼻腔がきわめて狭小であることから挿管困難が予測されたため気管切開後に全身麻酔を導入する方針となった.デクスメデトミジンで鎮静し局所麻酔下に気管切開術が施行された.不穏・体動などはなく呼吸抑制も認めなかった.気切孔より気管チューブが挿管されると同時に全身麻酔を導入...

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Published in日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 37; no. 4; pp. 432 - 438
Main Authors 荒井, 千春, 永井, 悠介, 松本, 重清
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本障害者歯科学会 2016
日本障害者歯科学会
The Japanese Society for Disability and Oral Health
Subjects
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ISSN0913-1663
2188-9708
DOI10.14958/jjsdh.37.432

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Summary:今回われわれは,精神遅滞,極度狭窄鼻腔および高度開口障害を伴う筋突起過長症患者の周術期管理を経験したので報告する.症例は28歳,女性.齲歯治療のため近医受診するも,開口制限があり精神遅滞も有するため障害者歯科および歯科口腔外科を紹介受診.画像検査などから筋突起過長症と診断され筋突起切除手術が予定された.開口量が約10mmであることに加え鼻腔がきわめて狭小であることから挿管困難が予測されたため気管切開後に全身麻酔を導入する方針となった.デクスメデトミジンで鎮静し局所麻酔下に気管切開術が施行された.不穏・体動などはなく呼吸抑制も認めなかった.気切孔より気管チューブが挿管されると同時に全身麻酔を導入した.術中,血行動態は安定.酸素化・換気は良好で予定どおり両側筋突起形成術が施行された.術後,気管チューブを抜去し気切チューブに入れ替えた後,覚醒させた.術後4日目に気切チューブを抜去し,術後16日目に経過良好で退院となった.退院時の開口量は18mmで現在,病院歯科において開口訓練および歯科治療が実施されている.本症例は高度開口障害だけでなく鼻腔の狭窄も伴い経口・経鼻挿管は困難であると推測されたため,自発呼吸を温存した意識下気管切開が施行された.その際,精神遅滞で患者の協力が得られない可能性があったため鎮静する必要があったが,呼吸抑制が少ないデクスメデトミジンによる鎮静は非常に有用であった.
ISSN:0913-1663
2188-9708
DOI:10.14958/jjsdh.37.432