幼児期に体動抑制下での強制的な歯科治療を行った自閉スペクトラム症児のその後の歯科への適応性の評価

幼児期に強制的な歯科治療を行った自閉スペクトラム症(Autistic Spectrum Disorder,以下ASD)児の9歳時での歯科への適応性を評価し,発達年齢や障害特性などとの関連性を考察した.当科で4~5歳時に体動抑制下での治療を経験したASD児のうち,9歳以降も当科で口腔衛生管理を行っている31人を対象とした.対象者を9歳時の行動評価から,通法群,抑制協力群,非協力群に分け,4~5歳時における発達年齢,ASDの障害特性,日常生活への適応に関するさまざまな項目について比較した.9歳時での行動評価の結果,通法群10人,抑制協力群8人,非協力群13人であった.通法群の4~5歳時における発達...

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Published in日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 38; no. 2; pp. 154 - 161
Main Authors 浜田, 尚香, 角谷, 久美代, 藤原, 富江, 久木, 富美子, 田井, ひとみ, 大西, 智之, 金高, 洋子, 畔栁, 知恵子, 樂木, 正実, 前田, 有加
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本障害者歯科学会 2017
日本障害者歯科学会
The Japanese Society for Disability and Oral Health
Subjects
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ISSN0913-1663
2188-9708
DOI10.14958/jjsdh.38.154

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Summary:幼児期に強制的な歯科治療を行った自閉スペクトラム症(Autistic Spectrum Disorder,以下ASD)児の9歳時での歯科への適応性を評価し,発達年齢や障害特性などとの関連性を考察した.当科で4~5歳時に体動抑制下での治療を経験したASD児のうち,9歳以降も当科で口腔衛生管理を行っている31人を対象とした.対象者を9歳時の行動評価から,通法群,抑制協力群,非協力群に分け,4~5歳時における発達年齢,ASDの障害特性,日常生活への適応に関するさまざまな項目について比較した.9歳時での行動評価の結果,通法群10人,抑制協力群8人,非協力群13人であった.通法群の4~5歳時における発達年齢の言語理解はその他2群より有意に高く,通法群とその他2群を分ける境界は2歳4.5カ月であった.さらに,通法群で多動性を有していた者は非協力群と比較して有意に少なかった.一方,非協力群で4~5歳時に触覚過敏性を有していた者,あるいは自傷を認めた者は,その他2群と比較して有意に多かった.これらの結果から,幼児期のASD児に対して強制的な治療を行っても,その時点での発達年齢の言語理解が2歳4.5カ月以上で,多動傾向が強くない場合は,将来は通法で治療できる可能性が高いと思われた.一方,幼児期に自傷を認めたり触覚過敏を有したりする者は,将来も歯科治療に対する適応性が改善する可能性は低いと考えられた.
ISSN:0913-1663
2188-9708
DOI:10.14958/jjsdh.38.154