静脈血栓塞栓症と腎・脾梗塞を契機に発見された高齢者心房中隔欠損症の1例

腎梗塞および脾梗塞による側腹部痛で発症した高齢者心房中隔欠損症の1 例を経験したので報告する. 症例は78歳の女性. 生来健康であったが2012年1 月, 突然の左側腹部痛が出現し次第に増悪したため当院救急外来を受診した. 来院時低酸素血症を認め, 原因精査のための胸腹部造影CTで肺塞栓症, 左腎梗塞, 脾梗塞を認めたため緊急入院となった. 抗凝固療法を行い症状は改善した. 多発動静脈塞栓症の原因疾患精査として経食道心エコーを行い, 心房中隔に径7.8mmの欠損孔を認め, 心房中隔欠損症ならびにそれに伴う奇異性塞栓症と診断した. 心房中隔欠損症は先天性心疾患の10%を占める疾患であり, 奇異性...

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Published inShinzo Vol. 46; no. 1; pp. 71 - 76
Main Authors 能登, 沙央理, 渋井, 敬志, 松下, 紀子, 大島, 杏子, 佐伯, 仁, 畑, 明宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2014
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
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Summary:腎梗塞および脾梗塞による側腹部痛で発症した高齢者心房中隔欠損症の1 例を経験したので報告する. 症例は78歳の女性. 生来健康であったが2012年1 月, 突然の左側腹部痛が出現し次第に増悪したため当院救急外来を受診した. 来院時低酸素血症を認め, 原因精査のための胸腹部造影CTで肺塞栓症, 左腎梗塞, 脾梗塞を認めたため緊急入院となった. 抗凝固療法を行い症状は改善した. 多発動静脈塞栓症の原因疾患精査として経食道心エコーを行い, 心房中隔に径7.8mmの欠損孔を認め, 心房中隔欠損症ならびにそれに伴う奇異性塞栓症と診断した. 心房中隔欠損症は先天性心疾患の10%を占める疾患であり, 奇異性塞栓症の原因となり得る. 本例では下肢造影CTで深部静脈血栓症を認めており, 深部静脈血栓症から肺塞栓症を生じ, 肺高血圧および右心系の負荷に伴う右房圧の上昇から心房中隔欠損症を介して逆シャントを生じ奇異性塞栓症を起こしたと考えられた. 心房中隔欠損症を伴う奇異性塞栓の再発予防に関しては, 薬物療法, デバイス閉鎖, 手術がある. 本例のような高齢者心房中隔欠損症の奇異性塞栓症においては, 薬物療法に対するデバイス閉鎖の優位性に一定の見解は得られておらず, 今後の検討を要する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.46.71