着色ホルマリン固定液および封緘容器による医療事故防止の提案―ホルマリン固定液由来の医療事故分析から

本邦における病理検査の固定液の取り扱いに関する医療事故は,8年間で54件発生している。主なものは,ミントオイル,生理食塩水,アルコールなどの薬剤とホルマリンの誤用によるものや,未開封と開封済みを一目で差別化できる仕組みが無いため,既に検体を入れた固定液に別の患者の検体を混同してしまうというもので,何れも大きな医療事故の原因となり得る。そこで,これらの医療事故防止対策として着色ホルマリンによるホルマリンの特別化と,検体混同を防ぐための固定容器・蓋の封緘方法を試作検討し,当院における4年間の実務検証を行った。その結果,実用的なホルマリン固定液は,0.01%以下のブロモチモールブルー又はフェノールレ...

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Published in医学検査 Vol. 70; no. 3; pp. 433 - 442
Main Authors 山下, 和也, 久場, 樹, 坂口, 忍, 吉田, 功, 村雲, 芳樹, 三枝, 信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.07.2021
日本臨床衛生検査技師会
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Summary:本邦における病理検査の固定液の取り扱いに関する医療事故は,8年間で54件発生している。主なものは,ミントオイル,生理食塩水,アルコールなどの薬剤とホルマリンの誤用によるものや,未開封と開封済みを一目で差別化できる仕組みが無いため,既に検体を入れた固定液に別の患者の検体を混同してしまうというもので,何れも大きな医療事故の原因となり得る。そこで,これらの医療事故防止対策として着色ホルマリンによるホルマリンの特別化と,検体混同を防ぐための固定容器・蓋の封緘方法を試作検討し,当院における4年間の実務検証を行った。その結果,実用的なホルマリン固定液は,0.01%以下のブロモチモールブルー又はフェノールレッドを単独あるいは混合して使用することが有用であることが判明した。この色素は長期間安定で変色や退色が無く,組織細胞傷害性も低い色素であり,色調を利用してホルマリンであることを気づかせる一助となる。加えて,固定容器の蓋と容器にかけて「剥離後文字が浮き出る封緘テープ」を貼布する仕組みは,未使用と使用済みの差別化と確認が容易となる。「着色」と「封緘」を備えた試作品は,4年間に約14万件の検体で使用され,この間のホルマリン固定液に関する医療事故の発生は見られず,未対策の時期と比較して明らかな抑制効果が得られた。従って,本提案は,ホルマリン固定液の取り扱いに由来した医療事故防止の一助となる新たな手段となる。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.20-106