走化性応答解読による刺激化学物質の推定

「1. 背景と概要」 一見単純なバクテリアも, 生存戦略の1つとして"好き"な化学物質が濃い場所に向かい, "嫌い"な物質から逃げる走化性を持つ. 走化性応答に関して従来は, 化学刺激に対して"好"か"嫌"かのみを判断(二値化)し行動を変化させると考えられてきた. 大腸菌は菌体あたり数本のべん毛を(根元のモーターで)スクリューのように回転させて泳ぐ. べん毛が反時計回り(CCW)に回転すると, べん毛が束になり推進力を得て直線的に泳ぐが, 時計回り(CW)に回転すると, その束がほぐれ菌は方向転換する. 誘引物質を...

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Published in生物物理 Vol. 64; no. 4; pp. 193 - 195
Main Authors 田中, 裕人, 曽和, 義幸, 小嶋, 寛明, 川岸, 郁朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2024
日本生物物理学会
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Summary:「1. 背景と概要」 一見単純なバクテリアも, 生存戦略の1つとして"好き"な化学物質が濃い場所に向かい, "嫌い"な物質から逃げる走化性を持つ. 走化性応答に関して従来は, 化学刺激に対して"好"か"嫌"かのみを判断(二値化)し行動を変化させると考えられてきた. 大腸菌は菌体あたり数本のべん毛を(根元のモーターで)スクリューのように回転させて泳ぐ. べん毛が反時計回り(CCW)に回転すると, べん毛が束になり推進力を得て直線的に泳ぐが, 時計回り(CW)に回転すると, その束がほぐれ菌は方向転換する. 誘引物質を感知するとCW回転の割合は低下し("好"の応答), 忌避物質を感知すると上昇する("嫌"の応答)ので, 菌は試行錯誤的に"好ましい"方向へと移動できる(バイアスのあるランダムウォーク). 見かけは"賢い行動"でも, しくみは単純というわけである. しかし, バクテリアは環境を単純に二値化して理解しているのだろうか? この疑問が本研究の出発点である.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.64.193