外傷性頭蓋内出血を合併した急性心筋梗塞の1例

症例は48歳, 男性. 屋外歩行中に突然心肺停止し, 後方に卒倒した. バイスタンダーによる心肺蘇生が開始され, 自動体外式除細動器による除細動1回で心拍再開し, 当院に救急搬送された. 来院時心電図でⅡ, Ⅲ, aVF誘導でST上昇と頭部CTで外傷性頭蓋内出血を認めた. ST上昇型心筋梗塞と診断し緊急冠動脈造影を施行したところ, 回旋枝に完全閉塞を認めた. 頭蓋内出血は活動性があり, 急性期に抗血小板薬や抗凝固薬の投与により出血が増悪すると判断したため, 血栓吸引とバルーン拡張のみで再灌流治療を行い, ステントは留置しなかった. 外傷性脳出血には頭蓋内圧センサーを留置して管理した. 入院中に...

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Published inShinzo Vol. 48; no. 1; pp. 78 - 86
Main Authors 磯貝, 俊明, 森, 大, 伊東, 勘介, 田中, 博之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2016
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.48.78

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Summary:症例は48歳, 男性. 屋外歩行中に突然心肺停止し, 後方に卒倒した. バイスタンダーによる心肺蘇生が開始され, 自動体外式除細動器による除細動1回で心拍再開し, 当院に救急搬送された. 来院時心電図でⅡ, Ⅲ, aVF誘導でST上昇と頭部CTで外傷性頭蓋内出血を認めた. ST上昇型心筋梗塞と診断し緊急冠動脈造影を施行したところ, 回旋枝に完全閉塞を認めた. 頭蓋内出血は活動性があり, 急性期に抗血小板薬や抗凝固薬の投与により出血が増悪すると判断したため, 血栓吸引とバルーン拡張のみで再灌流治療を行い, ステントは留置しなかった. 外傷性脳出血には頭蓋内圧センサーを留置して管理した. 入院中に心血管イベントは起こらずに経過した. 本症例では, 急性心筋梗塞に外傷性頭蓋内出血を合併したが, 冠動脈閉塞に対しては, あえてステント留置は行わずに, 血栓吸引とバルーン拡張のみの治療を行い, 治療後頭部疾患に対して脳神経外科医による厳重な管理を行うことで, 幸いにも良好な経過を得た. 活動性出血を合併する急性心筋梗塞の治療では, 安易にステント留置をして, 通常の抗血小板療法および抗凝固療法を行うと出血が増悪するリスクが高いため, 急性期の治療方針の決定に工夫を要すると考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.48.78