臨床検査技師によるSARS-CoV-2抗体イムノクロマトグラフィー検査を利用した全身麻酔下手術予定患者の入院トリアージ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は社会的に深刻な問題となった。医療機関ではCOVID-19対応に追われる一方で,COVID-19以外の患者の治療の正常化も課題となった。当院では予定手術症例に対して,医療従事者の感染リスク低減と院内感染の防止を目的に臨床検査技師によるSARS-CoV-2抗体イムノクロマトグラフィー検査を利用した入院トリアージを開始した。今回用いた検査キットは,抗体が検出されるまで13日必要とされている。当院での運用は,この点を鑑み,入院前の2週間は外出を避けることを患者に指示した。対象は2020年5月11日から6月17日までに全身麻酔下の手術予定で入院した...

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Published in医学検査 Vol. 70; no. 2; pp. 312 - 317
Main Authors 藤木, 翔太, 松浦, 秀哲, 坂本, 悠斗, 及川, 彰太, 大澤, 道子, 杉浦, 縁, 藤田, 孝, 三浦, 康生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.04.2021
日本臨床衛生検査技師会
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Summary:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は社会的に深刻な問題となった。医療機関ではCOVID-19対応に追われる一方で,COVID-19以外の患者の治療の正常化も課題となった。当院では予定手術症例に対して,医療従事者の感染リスク低減と院内感染の防止を目的に臨床検査技師によるSARS-CoV-2抗体イムノクロマトグラフィー検査を利用した入院トリアージを開始した。今回用いた検査キットは,抗体が検出されるまで13日必要とされている。当院での運用は,この点を鑑み,入院前の2週間は外出を避けることを患者に指示した。対象は2020年5月11日から6月17日までに全身麻酔下の手術予定で入院した患者325症例。325例中16例(4.9%)で抗体を検出した。抗体の内訳はIgM抗体が14例,IgG抗体が2例であった。いずれの症例もPCR検査またはLAMP法による遺伝子検査によって陰性が確認された。COVID-19の確定診断には遺伝子検査が優れているが,PCR法/LAMP法は結果判明までに時間を要すること,コストがかかることから全例検査施行には問題があった。そこでイムノクロマトグラフィー法による抗体検査を実施し入院患者のトリアージを行った。この取り組みにより300例以上の手術が適切に実施され,医療機関にとって重要である院内感染防止に役立ち,医療従事者や患者に安心と安全を提供することができた。本運用に臨床検査の専門家として臨床検査技師が参画し,COVID-19対策チームの一員としてチーム医療に貢献できた。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.20-83