障害者歯科医療における障害のある子どもをもつ親への支援 ―学際的研究からみえる現象

障害者歯科医療現場にはさまざまな「生きづらさ」のある人が来院する.歯科治療や歯科保健を進めるうえで,障害当事者だけでなく親への支援が必要となる場合も多い.本研究では障害者歯科医療での親支援について,障害者歯科学,臨床哲学,臨床心理学および小児看護学による学際的検討を行った.大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部に受診する障害当事者および家族に心理的支援の必要性を問うアンケートを実施しそのニーズを探った.その後障害のある子どもをもつ親を対象とした心理カウンセリングを7名に実施し,哲学対話を18回開催した.心理カウンセリングでは親に来談意欲の高さと,自分自身を語りの中心におく人が多い特徴がみられた...

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Published in日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 38; no. 1; pp. 16 - 23
Main Authors 秋山, 茂久, 青木, 健太, 新家, 一輝, 有田, 憲司, 竹中, 菜苗, 稲原, 美苗, 松川, 綾子, 村上, 旬平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本障害者歯科学会 2017
日本障害者歯科学会
The Japanese Society for Disability and Oral Health
Subjects
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ISSN0913-1663
2188-9708
DOI10.14958/jjsdh.38.16

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Summary:障害者歯科医療現場にはさまざまな「生きづらさ」のある人が来院する.歯科治療や歯科保健を進めるうえで,障害当事者だけでなく親への支援が必要となる場合も多い.本研究では障害者歯科医療での親支援について,障害者歯科学,臨床哲学,臨床心理学および小児看護学による学際的検討を行った.大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部に受診する障害当事者および家族に心理的支援の必要性を問うアンケートを実施しそのニーズを探った.その後障害のある子どもをもつ親を対象とした心理カウンセリングを7名に実施し,哲学対話を18回開催した.心理カウンセリングでは親に来談意欲の高さと,自分自身を語りの中心におく人が多い特徴がみられた.哲学対話では親の日常生活の中での「生きづらさ」が明らかとなり,哲学対話の場で互いの知識や経験などの情報交換が行われた.それによって障害当事者とその親の日常生活での障害者歯科の位置付けが明らかとなり,障害者歯科での対応が,親には安心感として伝わっているということが描き出された.本研究を通じ障害者歯科医療現場での親支援ニーズが存在し,親に「物語る」「語り合う」場所を提供することが,当事者の生活に寄り添えるケアを考え,多職種の支援をつなげ,新しい支援ネットワークの構築に寄与するとともに,当事者からのフィードバックが障害者歯科医療の質的向上に寄与する可能性が示された.
ISSN:0913-1663
2188-9708
DOI:10.14958/jjsdh.38.16