関節液中結晶の検出・同定に対する保存影響の検討

結晶誘発性関節炎の代表である尿酸ナトリウム(MSU)結晶による痛風,ピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶による偽痛風は,関節液中結晶鏡検で確定できる。これを目的とした関節液は数日の冷蔵保存が可能との報告はあるが,我々が調査した限り本邦において結晶の経時的変化を述べた文献はなかった。そこで,関節液保存による結晶の経時的変化を検討した。2020年5月~2022年10月の期間に当院検査室に提出された関節液のうち,ヘパリン加関節液76件と抗凝固剤関節液55件を使用した。鋭敏色偏光装置を用いて鏡検を行い,独自の目視定性基準に沿って保存影響を検討した。検体を4℃で冷蔵保存し,24時間・48時間・72時間・...

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Published in医学検査 Vol. 72; no. 3; pp. 413 - 418
Main Authors 吉田, 啓一, 片山, 裕大, 小笠原, 志朗, 口広, 智一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.07.2023
日本臨床衛生検査技師会
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ISSN0915-8669
2188-5346
DOI10.14932/jamt.22-82

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Summary:結晶誘発性関節炎の代表である尿酸ナトリウム(MSU)結晶による痛風,ピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶による偽痛風は,関節液中結晶鏡検で確定できる。これを目的とした関節液は数日の冷蔵保存が可能との報告はあるが,我々が調査した限り本邦において結晶の経時的変化を述べた文献はなかった。そこで,関節液保存による結晶の経時的変化を検討した。2020年5月~2022年10月の期間に当院検査室に提出された関節液のうち,ヘパリン加関節液76件と抗凝固剤関節液55件を使用した。鋭敏色偏光装置を用いて鏡検を行い,独自の目視定性基準に沿って保存影響を検討した。検体を4℃で冷蔵保存し,24時間・48時間・72時間・96時間・1週間後に結晶の鏡検を行った。保存前後の目視定性値の一致率は,ヘパリン加検体では,CPPD結晶:96.0%(168/175),MSU結晶:100%(40/40),結晶:100%(165/165)であった。一方,抗凝固剤検体では,CPPD結晶:94.3%(99/105),MSU結晶:100%(35/35),結晶:100%(135/135)であった。両検体とも抗凝固剤の有無に関わらず一致率は良好であった。CPPD結晶の一部が目視定性値にばらつきを認めたが,結晶検出は十分可能であった。これらの結果から,結晶検出・同定を目的とした関節液の冷蔵保存は一週間可能であると思われる。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.22-82