大脳基底核疾患の病態生理

大脳基底核の機能障害により, パーキンソン病やジストニア, 舞踏運動などが生じるが, その病態機序は未だ十分解明されていない. 多くはAlexander & Crutcherの大脳皮質-基底核ループモデルを用いて, 線条体から淡蒼球内節/黒質網様部に投射する直接路と, 線条体から淡蒼球外節, 視床下核を通って淡蒼球内節/黒質網様部に投射する間接路との活動のバランスで説明されることが多い. この仮説では, パーキンソン病に代表されるhypokinetic disorderでは, 大脳皮質へ促通性の機能をもつ直接路の活動が低下し, 抑制性の機能を持つ間接路の活動が増加していることにより,...

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Published in神経治療学 Vol. 39; no. 3; p. 186
Main Author 花島, 律子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経治療学会 2022
Japanese Society of Neurological Therapeutics
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ISSN0916-8443
2189-7824
DOI10.15082/jsnt.39.3_186

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Summary:大脳基底核の機能障害により, パーキンソン病やジストニア, 舞踏運動などが生じるが, その病態機序は未だ十分解明されていない. 多くはAlexander & Crutcherの大脳皮質-基底核ループモデルを用いて, 線条体から淡蒼球内節/黒質網様部に投射する直接路と, 線条体から淡蒼球外節, 視床下核を通って淡蒼球内節/黒質網様部に投射する間接路との活動のバランスで説明されることが多い. この仮説では, パーキンソン病に代表されるhypokinetic disorderでは, 大脳皮質へ促通性の機能をもつ直接路の活動が低下し, 抑制性の機能を持つ間接路の活動が増加していることにより, 抑制が強まり運動が減るとされる. 一方, 舞踏運動などのhyperkinetic disorderでは, 逆に, 直接路の活動が増加し間接路の活動が低下するため運動が過多になるとされる. この仮説はわかりやすく動きの性状とも合致している. しかし, 単純な促通と抑制のバランスのみでは説明できない部分も多く, ジストニアについてはこのモデルでは説明されていない. 近年, 脳深部刺激療法時の記録などから, 大脳基底核疾患では基底核の神経活動が特定の周期で同期していたり(oscillation), バースト状の発火パターンに変化していたりすることが検出されてきている. このような神経活動のリズムの変化がどういう機序により生じているかは不明であるが, 特定の症状との関連が見いだされており治療ターゲットにもできることがわかってきている. また, 持続的に神経活動の状態が変化する神経可塑性誘導が基底核疾患では変化していることも知られるようになってきている. 今回は, 基本的な基底核-皮質ループの理解を深めるとともに最近の基底核疾患の仮説を紹介し, これらの病態変化を反映するヒトでの生理所見を説明する.
ISSN:0916-8443
2189-7824
DOI:10.15082/jsnt.39.3_186