アルコール性心筋症が疑われ,心エコー図検査で経過を追った1例

患者は30歳代,女性。嗜好歴としてアルコールを10年以上多量に摂取している。経胸壁心エコー図検査(TTE)では左房と左室が拡大し,左室のびまん性壁運動低下を認めた。また,高度の僧帽弁逆流,中等度の三尖弁逆流を認め,IVCは拡大し呼吸性変動は低下していた。多量の飲酒歴とTTE所見からアルコール性心筋症(ACM)が疑われ,禁酒を指示し,内科的治療を開始した。約2か月後の再診にて,アルコール摂取を減量したと申告があり,TTEでは左房や左室は縮小し,壁運動低下は改善した。僧帽弁逆流や三尖弁逆流も軽度となり,IVCの呼吸性変動は良好となった。ACMは二次性心筋症のひとつであり,アルコールの長期的な過剰摂...

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Published in医学検査 Vol. 71; no. 4; pp. 759 - 764
Main Authors 宮元, 祥平, 久米, 江里子, 平井, 裕加, 上田, 彩未, 清遠, 由美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.10.2022
日本臨床衛生検査技師会
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Summary:患者は30歳代,女性。嗜好歴としてアルコールを10年以上多量に摂取している。経胸壁心エコー図検査(TTE)では左房と左室が拡大し,左室のびまん性壁運動低下を認めた。また,高度の僧帽弁逆流,中等度の三尖弁逆流を認め,IVCは拡大し呼吸性変動は低下していた。多量の飲酒歴とTTE所見からアルコール性心筋症(ACM)が疑われ,禁酒を指示し,内科的治療を開始した。約2か月後の再診にて,アルコール摂取を減量したと申告があり,TTEでは左房や左室は縮小し,壁運動低下は改善した。僧帽弁逆流や三尖弁逆流も軽度となり,IVCの呼吸性変動は良好となった。ACMは二次性心筋症のひとつであり,アルコールの長期的な過剰摂取によって,拡張型心筋症様の心筋障害を呈する疾患である。欧米では拡張型心筋症様の病態を示す症例のうち,23~40%はアルコールが関与していると報告されており,禁酒またはアルコール摂取の減量により心機能および予後が改善するといわれている。本症例も長期的にアルコールを過剰摂取していたために,心筋障害を呈し,禁酒を行ったことによって心機能が改善したため,ACMと疑った。また,再度アルコール摂取量が増加したことで,左室の拡大を認めた。ACMはアルコール摂取量に依存して,心臓の大きさや左室収縮能などの心機能も変動すると思われ,ACMが疑われた際には,TTEでの経過観察が有用と考えられた。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.22-28