尿沈渣検査における尿量10 mL未満の検査法の構築

尿沈渣検査において,採尿量が非常に少ない検体を経験する。標準法では10 mLの尿を使用するが,10 mL未満の検体も「できる限り検査を実施し,その旨を記載する」となっている。そこで問題となるのは,尿量の少ない検体は,どのように検査して報告すべきかが明確でないことである。また尿量が少ないため再検査となり,患者の負担が増えることもあった。これらの問題を解決するため,尿量が少ない場合の尿沈渣検査法の構築を試みた。患者尿161検体を用い,標準法と尿量や沈渣量を調整した検体の尿沈渣成績を比較し,標準法と同等の成績が得られる検査法を検索した。161検体で検出された926の有形成分をすべて比較した結果,5...

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Published in医学検査 Vol. 70; no. 1; pp. 40 - 52
Main Author 久野, 豊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.01.2021
日本臨床衛生検査技師会
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Summary:尿沈渣検査において,採尿量が非常に少ない検体を経験する。標準法では10 mLの尿を使用するが,10 mL未満の検体も「できる限り検査を実施し,その旨を記載する」となっている。そこで問題となるのは,尿量の少ない検体は,どのように検査して報告すべきかが明確でないことである。また尿量が少ないため再検査となり,患者の負担が増えることもあった。これらの問題を解決するため,尿量が少ない場合の尿沈渣検査法の構築を試みた。患者尿161検体を用い,標準法と尿量や沈渣量を調整した検体の尿沈渣成績を比較し,標準法と同等の成績が得られる検査法を検索した。161検体で検出された926の有形成分をすべて比較した結果,5 mL~9 mLの尿は,尿量5 mL,沈渣量0.1 mL(標準法と同じ濃縮率)で測定すれば,臨床的意義の高い有形成分の見落としは少なく,標準法と同等の結果が得られることが判明した。また5 mL未満の尿は,全量を使用して沈渣量0.1 mLで測定すれば,沈渣量0.2 mLで測定するよりも見落としを少なくできることも判明した。10 mL未満の尿検体は,この方法を用いることで腎・尿路系疾患の診断に貢献でき,患者の負担も軽減できると思われた。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.20-65