腹膜透析例における骨髄炎を伴った下顎骨骨折による感染性偽関節の治療症例

透析療法の中で腹膜透析は在宅で行うことができ,血液透析と比較して,血液中の溶質と体水分の移動が緩徐であり,循環器への負担が少なく,病院への通院が少なくて済む特徴がある.今回,70歳代男性で末期腎不全による腹膜透析中患者の骨髄炎を伴った陳旧性下顎骨骨折の偽関節に対し,消炎後に囲繞結紮にて非観血的整復固定術を行った症例を経験した.消炎は入院下でアンピシリン点滴静注と瘻孔部から局所を洗浄し,局所麻酔下で腐骨を除去した.瘻孔からの排膿の消失後に全身麻酔下に下顎レジン床(咬合可能)を用いた囲繞結紮で下顎骨骨折部の固定(非観血的整復固定術)を行った.下顎骨正中骨折の非観血的整復固定術の場合,術後6週間の固...

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Published inJOURNAL OF UOEH Vol. 40; no. 2; pp. 209 - 215
Main Authors 平島, 惣一, 宮脇, 昭彦, 於保, 耕太郎, 志渡澤, 和佳, 新井, 基央, 古田, 功彦, 大矢, 亮一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 産業医科大学 01.06.2018
産業医科大学
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Summary:透析療法の中で腹膜透析は在宅で行うことができ,血液透析と比較して,血液中の溶質と体水分の移動が緩徐であり,循環器への負担が少なく,病院への通院が少なくて済む特徴がある.今回,70歳代男性で末期腎不全による腹膜透析中患者の骨髄炎を伴った陳旧性下顎骨骨折の偽関節に対し,消炎後に囲繞結紮にて非観血的整復固定術を行った症例を経験した.消炎は入院下でアンピシリン点滴静注と瘻孔部から局所を洗浄し,局所麻酔下で腐骨を除去した.瘻孔からの排膿の消失後に全身麻酔下に下顎レジン床(咬合可能)を用いた囲繞結紮で下顎骨骨折部の固定(非観血的整復固定術)を行った.下顎骨正中骨折の非観血的整復固定術の場合,術後6週間の固定期間が必要であるが,本症例は感染や骨欠損を生じていたため,術後3ヶ月間固定した.長期透析療法患者の顎骨への感染に対しては細胞性免疫機能の低下,腎性骨異栄養症(ROD),Chronic Kidney Disease (CKD)-Mineral and Bone Disorderなどにより,易感染性や治癒不全などが生じる.本症例では歯性感染源や骨折に感染を合併し,遷延化したと考えられる.長期透析療法患者に顎骨の感染を認めた場合には,透析医と密に連携し,腎機能に対して最小限の影響になるように抗菌薬の投与経路や代謝に応じた用法用量を選択することが重要である.局所については口腔衛生管理や洗浄での感染制御が重要であり,抗菌薬を使用しない治療管理が目標となる.
ISSN:0387-821X
2187-2864
DOI:10.7888/juoeh.40.209