妊娠後期にがんと診断された夫婦ががん治療方針と妊孕性温存について意思決定するプロセスの事例研究
目的:妊娠後期にがんと診断された妊婦と夫が,がんの治療方針と妊孕性温存について意思決定するプロセスを事例研究によって明らかにする.方法:妊娠後期のがん患者に,がんの治療方針と妊孕性温存に関する意思決定について振り返る半構成的面接を用いた.分析はSCATを参考に,患者と家族の意思決定のプロセスに関するテクストを抽出し,概念化を図り,ストーリーラインを記述した.結果:30歳代女性,妊娠8ヶ月で乳がんと診断,普通分娩で出産後,乳房温存術施行,生殖補助医療を受けた.プロセスとして,25テーマが抽出された.患者と夫は,共に医療関係の仕事に就いていた背景もあり,現実を冷静に受け止めた.【抗がん剤治療が妊孕...
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Published in | 家族看護学研究 Vol. 28; no. 2; pp. 112 - 122 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本家族看護学会
31.03.2023
日本家族看護学会 |
Subjects | |
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ISSN | 1341-8351 2758-8424 |
DOI | 10.60320/jarfn.28.2_112 |
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Summary: | 目的:妊娠後期にがんと診断された妊婦と夫が,がんの治療方針と妊孕性温存について意思決定するプロセスを事例研究によって明らかにする.方法:妊娠後期のがん患者に,がんの治療方針と妊孕性温存に関する意思決定について振り返る半構成的面接を用いた.分析はSCATを参考に,患者と家族の意思決定のプロセスに関するテクストを抽出し,概念化を図り,ストーリーラインを記述した.結果:30歳代女性,妊娠8ヶ月で乳がんと診断,普通分娩で出産後,乳房温存術施行,生殖補助医療を受けた.プロセスとして,25テーマが抽出された.患者と夫は,共に医療関係の仕事に就いていた背景もあり,現実を冷静に受け止めた.【抗がん剤治療が妊孕性に与える影響を危惧しながらの次子希望の意思継続】【抗がん剤治療による副作用が育児に与える影響への危惧】をもちながら,【産科看護師による出産前からの母乳育児への支援と乳腺外科医と産科医の連携】【育児とがん治療を並行する夫婦への産科看護師による出産後の昼夜を問わない育児指導】を受け,【自分自身で治療の情報を収集し統合する決意】をしていた.そして,【医療者による妊孕性温存のための生殖補助医療への橋渡し】や夫からの後押しを得て,生殖補助医療を受けた.考察:妊娠後期のがん患者と夫の意思決定プロセスは,家族員それぞれの立場での思いが交錯し,多職種が関わる複雑なプロセスであった.さらに,妊娠とがん治療に加えて,妊孕性温存についての検討をする必要があった.そのような状況で,患者は自身で治療の情報収集・統合することを決意し,がん治療方針や妊孕性温存の選択を行っていた. |
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ISSN: | 1341-8351 2758-8424 |
DOI: | 10.60320/jarfn.28.2_112 |