腸管子宮内膜症から発生した類内膜癌の一例

我々は腸管子宮内膜症から発生した類内膜癌を経験したので報告する。症例は30歳代女性,10年前から腹痛主訴に頻回受診され,母の子宮体癌や姉の卵巣癌を契機に婦人科で定期的に血中CA125値及び経直腸超音波検査の経過観察がなされていたが,各種検査では明らかな器質的変化は認められなかった。数日前から持続する腹痛を主訴に来院し,腹部超音波検査及び腹部CT検査にて上行結腸に腸重積を指摘された。同日腹腔鏡にて整復中に腫瘤を認め,回盲部腫瘤とS状結腸の憩室が切除された。病理組織診断は盲腸の子宮内膜症から発生した腫瘍で組織型は類内膜癌(Grade 2)であった。家族歴から家族性乳癌卵巣癌の可能性もあり遺伝子検査...

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Published in医学検査 Vol. 71; no. 1; pp. 153 - 158
Main Authors 當房, 万奈美, 室木, 魁人, 岩﨑, 由恵, 久保, 勇記, 戸野川, 始, 木村, 拓也, 竹野, 里奈, 大前, 裕也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.01.2022
日本臨床衛生検査技師会
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ISSN0915-8669
2188-5346
DOI10.14932/jamt.21-9

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Summary:我々は腸管子宮内膜症から発生した類内膜癌を経験したので報告する。症例は30歳代女性,10年前から腹痛主訴に頻回受診され,母の子宮体癌や姉の卵巣癌を契機に婦人科で定期的に血中CA125値及び経直腸超音波検査の経過観察がなされていたが,各種検査では明らかな器質的変化は認められなかった。数日前から持続する腹痛を主訴に来院し,腹部超音波検査及び腹部CT検査にて上行結腸に腸重積を指摘された。同日腹腔鏡にて整復中に腫瘤を認め,回盲部腫瘤とS状結腸の憩室が切除された。病理組織診断は盲腸の子宮内膜症から発生した腫瘍で組織型は類内膜癌(Grade 2)であった。家族歴から家族性乳癌卵巣癌の可能性もあり遺伝子検査を勧め,BRCA1/BRCA2遺伝子検査は遺伝子多型で変異陰性,BRAF V600E遺伝子検査の変異陰性より,Lynch症候群を疑い,MMR(mismatch repair)タンパクの免疫組織化学染色を施行し,MSH6(−),PMS2(+)より高頻度マイクロサテライト不安定性であった。Lynch症候群が疑われたがMMR遺伝子検査は家族が希望されず実施していない。腸管子宮内膜症を発見することは難しいが,疑って注意深く観察すれば内視鏡検査やMRIなどで指摘できる病変である。腹部超音波検査においても月経に一致した腹痛などを認める場合は子宮内膜症も念頭に検査に対峙することが重要と考えられた。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.21-9