特集:ここまでわかった絶滅した日本の狼の起源―はじめに
日本には明治時代まで本土地域(九州, 四国, 本州)にニホンオオカミ(Canis lupus hodophilax, もしくはC.hodophilax)と北海道にエゾオオカミ(C.l.hattai)が生息していた(Endo 2015). また江戸時代末期~明治初期には国後島と択捉島にもオオカミが生息していたとの記録もあるが(Snow 1897), このような小さい島々に継続的に生存可能だったのかといった疑問が残る. ニホンオオカミは20世紀初頭, エゾオオカミは19世紀末期に絶滅したと推定されるが, 日本列島の住人とオオカミとは有史以来の長い付き合いがあった. オオカミは伝統的に大和民族やアイ...
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Published in | 哺乳類科学 Vol. 63; no. 1; pp. 3 - 4 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本哺乳類学会
2023
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Summary: | 日本には明治時代まで本土地域(九州, 四国, 本州)にニホンオオカミ(Canis lupus hodophilax, もしくはC.hodophilax)と北海道にエゾオオカミ(C.l.hattai)が生息していた(Endo 2015). また江戸時代末期~明治初期には国後島と択捉島にもオオカミが生息していたとの記録もあるが(Snow 1897), このような小さい島々に継続的に生存可能だったのかといった疑問が残る. ニホンオオカミは20世紀初頭, エゾオオカミは19世紀末期に絶滅したと推定されるが, 日本列島の住人とオオカミとは有史以来の長い付き合いがあった. オオカミは伝統的に大和民族やアイヌ民族にとっては特別な存在で神や神の使いとみなされたが, 一方で近代化(西欧化)とともに害獣とされ駆除の対象となり畏怖や恐怖の対象でもあった(ウォーカー 2009). さらに生息地の破壊や病気の蔓延もあり, いまでは完全に現在の日本国の範囲から消滅してしまった. |
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ISSN: | 0385-437X 1881-526X |
DOI: | 10.11238/mammalianscience.63.3 |