高速原子間力顕微鏡による結晶性セルロース酵素分解のリアルタイム1分子イメージング

「1. はじめに」セルロースは, 植物細胞壁の約半分を占める構成成分であり, 地球上で最も豊富に存在する生物資源(バイオマス)である1). 化学的に安定なβ-1,4-結合と分子内および分子間の水素結合によって結晶性セルロース(セルロースI)を形成しているため, 再生可能ではあるが難分解性のバイオマスである. その一方で, セルロース分解性の微生物はこのように難分解性のセルロースを常温, 常圧下で分解してしまうことを考えると, セルロース分解酵素(セルラーゼ)による結晶性セルロース分解の仕組みを理解することで, バイオリファイナリーを基本とする環境適応型かつ循環型な社会の構築も実現可能となる....

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Published in生物物理 Vol. 53; no. 3; pp. 140 - 144
Main Authors 五十嵐, 圭日子, 内橋, 貴之, 鮫島, 正浩, 安藤, 敏夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 01.01.2013
日本生物物理学会
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Summary:「1. はじめに」セルロースは, 植物細胞壁の約半分を占める構成成分であり, 地球上で最も豊富に存在する生物資源(バイオマス)である1). 化学的に安定なβ-1,4-結合と分子内および分子間の水素結合によって結晶性セルロース(セルロースI)を形成しているため, 再生可能ではあるが難分解性のバイオマスである. その一方で, セルロース分解性の微生物はこのように難分解性のセルロースを常温, 常圧下で分解してしまうことを考えると, セルロース分解酵素(セルラーゼ)による結晶性セルロース分解の仕組みを理解することで, バイオリファイナリーを基本とする環境適応型かつ循環型な社会の構築も実現可能となる. しかしながらセルロースの酵素分解で大きな問題とされているのが, セルラーゼによる結晶性セルロースの分解反応の遅さである. 化学的に安定なセルロースの分解が, 自然界において長い年月がかかることは当然のこととも言えるが, セルロースを工業的に利用するためには, 短時間(長くとも数日程度)でグルコースにまで分解しなければ, 石油を出発原料としたオイルリファイナリーには太刀打ちできない.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.53.140