重症ハムストリング近位付着部損傷後に保存療法にて競技復帰したトップアスリートの一例

重症ハムストリング近位付着部損傷に対して,保存療法を選択した症例について報告する. 症例は25 歳女性,柔道選手.試合中に右膝関節伸展位で股関節屈曲強制され受傷し,ハムストリング総腱断裂と診断された.受傷後4週で求心性収縮,6週で伸張性収縮を低強度より開始し,症状の悪化なく8週より練習再開し,15週で国際大会に出場した.復帰時は徒手抵抗での膝屈曲0~30度の範囲の筋出力に明らかな左右差を認めた.MRIでは,ハムストリング筋性部は遠位に退縮したが,総腱部の連続性がみられた. 近年,総腱断裂は手術適応とされ,良好な成績の報告が多数あるが,本症例は保存療法を選択した.十分な筋力回復に至らなかったが,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 33; no. 1; pp. 140 - 146
Main Authors 鈴木, 章, 田中, 彩乃, 中嶋, 耕平, 高橋, 佐江子, 奥脇, 透
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床スポーツ医学会 2025
日本臨床スポーツ医学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1346-4159
2758-3767
DOI10.57474/jjcsm.33.1_140

Cover

More Information
Summary:重症ハムストリング近位付着部損傷に対して,保存療法を選択した症例について報告する. 症例は25 歳女性,柔道選手.試合中に右膝関節伸展位で股関節屈曲強制され受傷し,ハムストリング総腱断裂と診断された.受傷後4週で求心性収縮,6週で伸張性収縮を低強度より開始し,症状の悪化なく8週より練習再開し,15週で国際大会に出場した.復帰時は徒手抵抗での膝屈曲0~30度の範囲の筋出力に明らかな左右差を認めた.MRIでは,ハムストリング筋性部は遠位に退縮したが,総腱部の連続性がみられた. 近年,総腱断裂は手術適応とされ,良好な成績の報告が多数あるが,本症例は保存療法を選択した.十分な筋力回復に至らなかったが,競技スタイルや技の選択等,患部に配慮した動作の代用が可能であったことが復帰可能となった一因と考えられた.安全な機能回復や治療選択のため,競技特性や身体機能の経過を集約し検証していく必要があると思われる.
ISSN:1346-4159
2758-3767
DOI:10.57474/jjcsm.33.1_140