内耳の膜電位駆動型モータータンパク質「プレスチン」の構造変化の可視化に成功

「1. 内耳のモータータンパク質「プレスチン」」我々哺乳類の聴覚器官である耳は, 微小な空気振動を音として感じ取るのに特化した機能と構造を持つ. その中でも, 内耳の蝸牛に存在する外有毛細胞は, 膜電位の変化に応じて細胞長を伸縮させることで音の振動を機械的に増幅しており, この「蝸牛増幅」というしくみは, 哺乳類の音に対する高い感度において, とりわけ重要な役割を担っている. この外有毛細胞の運動はエレクトロモーティリティ (electromotility ; 以下eM) と呼ばれ, 細胞側面の細胞膜に高密度に局在している膜電位駆動型モータータンパク質「プレスチン」 (prestin) が,...

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Published in生物物理 Vol. 65; no. 1; pp. 9 - 13
Main Author 桑原, 誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2025
日本生物物理学会
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Summary:「1. 内耳のモータータンパク質「プレスチン」」我々哺乳類の聴覚器官である耳は, 微小な空気振動を音として感じ取るのに特化した機能と構造を持つ. その中でも, 内耳の蝸牛に存在する外有毛細胞は, 膜電位の変化に応じて細胞長を伸縮させることで音の振動を機械的に増幅しており, この「蝸牛増幅」というしくみは, 哺乳類の音に対する高い感度において, とりわけ重要な役割を担っている. この外有毛細胞の運動はエレクトロモーティリティ (electromotility ; 以下eM) と呼ばれ, 細胞側面の細胞膜に高密度に局在している膜電位駆動型モータータンパク質「プレスチン」 (prestin) が, このeMを駆動していることが分かっている. プレスチンは, SLC26陰イオン輸送体の遺伝子ファミリーに属する膜貫通タンパク質であり, その運動活性には細胞内の塩化物イオンが必須であるが, 他のSLC26陰イオン輸送体に比べて陰イオン輸送活性が非常に小さくほとんど検出されない.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.65.9